
人事の人ほど、思い入れが強い
タレントバンクの話をしていると、企業の人事担当の方の思い入れの強さに、いつも驚く。とくに、自分たちが育てた人のスキルや評価に対する思いは、真面目に人事をやってきた人ほど強い。「この人たちを、ちゃんと管理していきたい」。その気持ちは、よく分かる。
ただ、話していて、ひとつだけ抜けがちな観点がある気がする。「その関係が、この先どのくらい続くのか」という、長い目だ。思い入れが強いぶん、そこが少し見えにくくなる。
まず、勤続年数を感情と切り離して見る
冷たく聞こえるかもしれないが、まずは平均勤続年数を、感情と別に、客観的に見たほうがいい。
どんなに長くても、勤続には限界がある。30代以下だと、平均で5年くらいが一般的だ。どれだけロイヤリティの高い会社でも、これが何十倍になるわけではない。そもそも終身雇用という言葉自体が、もう薄れてきている。だとしたら、長く見積もっても、その2倍の10年くらいを前提に置くのが現実的だと思う。
その10年の中で、一人ひとりのスキルを細かく管理していくのは、実際、相当に大変だ。そして、もっと引っかかるのはここだ。自社で育てたスキルが、一社の中だけで終わってしまう。それは、本当にいいことなんだろうか。
自社単独のスキル管理は、たぶん無理だった
どの会社も、世の中で汎用的に通じるスキル管理ができるわけではない。ここが難しい。
同じ「これができる」でも、会社によってレベル感が違う。習熟度の基準も、独自の教育の上に乗っている。一つの技術をとっても、A社の「できる」とB社の「できる」は、そろっていない。だから、自社の中だけで閉じたスキル管理は、どこまでいっても外の世界とつながらない。正直、自社単独でこれをやりきるのは無理なんじゃないか。ずっと、そう思っていた。
市場のほうは、スキルで給料を払う方向へ、はっきり動いている。Robert Halfの2026年のガイドでは、採用マネージャーの84%が「需要の高いスキルには高い給料を出す」と答え、IT系リーダーの87%が「同じ職務でも専門スキルを持つ人にはより高く払う」と言っている。つまり、スキルで払いたい気持ちは、もうある。足りなかったのは、それを測る客観的なものさしのほうだ。
ここに、AIが来た
ずっと無理だと思っていたところに、AIが現れた。
AIのおかげで、習熟度のランク付けを、定性的な言葉から、定量的な評価へ変えられるようになりつつある。たとえば「これができる」と一口に言っても、中身はいろいろだ。どれだけ丁寧にできるのか。時間をかければできるのか。時間をかけて、どれくらいの品質まで持っていけるのか。こういうことを言葉で語れば、AIがぜんぶ整理してまとめてくれる。そういう世の中に、急に変わった。
これを使えば、世の中の横並びで、スキルのレベルをある程度そろえてランク付けできる。A社の「できる」とB社の「できる」を、同じものさしの上に置ける。会社ごとにバラバラだったものが、比べられる形になる。
サティフィカを、定量的に可視化する
私たちがやりたいのは、ここだ。個人が持ち歩ける技能やスキル、経験、私たちの言うスキルサティフィカを、AIで定量的に可視化する。誰が、何を、どのレベルでできるのか。それが会社をまたいでも通じる形で、本人に貯まっていく。
そうなれば、スキルベースで給料を払う、という話にも、やっと客観的な軸が乗る。「この人はこのスキルをこのレベルで持っている、だからこの値段」。思い入れでも、勤続年数でもなく、事実で語れる。人事の人が大事にしてきた「育てたスキルを見てあげたい」という気持ちを、一社の中で終わらせずに、その人自身の資産として持たせてあげられる。
終わらせない、を仕組みにする
平均勤続が10年なら、その10年で育てたものを、その人の次にもつなげたい。一社で閉じるのではなく、個人に貯まって、持ち運べて、しかもレベルが客観的に見える。スキルベースで給料を払える時代が、AIのおかげで、思ったより急に来た気がしている。あとは、それを測る軸を、ちゃんと形にするだけだ。私たちは、そこを目指してサービスを作っていきたい。