2023/10/30
請求書

インボイス制度における振込手数料の扱いと処理方法をわかりやすく解説

2023年10月にスタートした、インボイス制度ですが、振込手数料の取扱いと処理方法をご存じでしょうか?いま一度ここで解説いたします。

振込手数料負担の原則は買い手負担


法人間の取引では必ず請求書による支払いが発生します。
その際、支払いにおける振り込み手数料はどちらが支払うべきかご存じでしょうか?
法律上は、「請求書を受け取った支払い主側」が振り込み手数料を負担することが原則になっています。
ただし、あくまでも原則事項であり絶対ではありません。
例外の場合は契約書等に記載されている可能性があるので、トラブルを避けるためにも必ず契約書等を確認するようにしましょう。

 

買い手が振込手数料を負担する場合の対処法


振り込み手数料は取引件数に比例して負担総額が増えていきます。
金銭的負担を抑えるために、振り込み手数料を買い手側にお願いする会社も存在します。

・買い手側に負担してもらう場合の注意点

①新規顧客の場合
契約書等に、振込手数料を負担いただく旨を記載する必要があります。
②既存顧客の場合
一方的に書面にて振込手数料の負担に関する変更をお願いした場合、トラブルになることも考えられます。

直接口頭で合意を得た後に、書面を交わすようにしましょう。振込手数料に関しては原則、売り手側の負担になります。
ただ例外事例もあるのでトラブルを回避するためにも、しっかり契約書等を確認していくようにしましょう。

 

買い手が振込手数料を負担する場合の対応


買い手から売り手への支払い方法が銀行口座への振込の場合、
その際に発生した振込手数料は、「振込手数料負担の原則は買い手負担」でも解説したとおり
「請求書を受け取った支払い主側」が負担することが原則となっています。

そういった事情から、買い手が振込手数料を負担するのが一般的とされています。
ただしあくまで原則であり法的に定められたものではありません。
売り手側・買い手側双方の取り決めのうえで売り手側が手数料を負担する取引も、
世間には多く存在しています。

認識の齟齬が生まれないよう、
振込手数料の負担を買い手側とする場合は売り手側には以下の対応をおすすめします。

・振込手数料の負担をお願いしたい旨を事前に伝える
・買い手側に振込手数料負担をお願いする一文を請求書面に添える
(例文:恐れ入りますが、振込手数料は貴社でご負担をお願いいたします)

手数料の負担は買い手側であるという一般的な考え方をすべての取引に当てはめてしまうと、
取引先との思わぬトラブルに発展する可能性があります。
そういった事態を防ぐためにも事前にコミュニケーションや対応をしておくことが望ましいでしょう。

 

振込手数料の処理方法について


以下、振込手数料が発生した際の各処理方法についていくつかの例をあげながら解説していきます。

【仕入税額控除】
振込手数料は課税取引のひとつとして数えられます。
そのためインボイス制度導入後は、金融機関より適格請求書の交付を受けることで仕入税額控除を受けることができます。
ただし、ATMによる振込手数料3万円未満の振込の場合は適格請求書の交付を受けることが難しいため、
一定の事項を帳簿に記載することにより適格請求書の交付を受けなくても仕入税額控除を受けることができます。

【仕訳処理】
自社負担の振込手数料の勘定科目は、仕訳方法により買い手の場合と売り手の場合とで異なる場合があります。
以下、それぞれの立場での仕訳方法の一例をご紹介します。

○買い手の場合

(例)仕入 ¥100,000、振込手数料 ¥550を負担する場合

借方 貸方
仕入 100,000 普通預金 100,000
支払手数料 550 普通預金 550

振込手数料の勘定科目は「支払手数料」です。仕入に加え、「支払手数料」として振込手数料を計上します。

○売り手の場合

(例)売上 ¥100,000、振込手数料 ¥550を負担する場合

借方 貸方
普通預金 99,450 売上 100,000
売上値引 550    

振込手数料を勘定科目は「売上値引」として計上します。
買い手側より請求金額(売上金額)から振込手数料額を差し引いた金額が振り込まれ、売上金額から振込手数料分を値引きをしたというかたちで処理をする方法です。
インボイス制度の導入後、値引きや返品を行う場合は適格返金請求書の発行が必要になります。
しかし、「適格返還請求書とは」でも触れましたが、特例として少額の値引き(1万円(税込)未満)であれば適格返還請求書の発行は免除となることがわかりました。
したがって上記の例の振込手数料(売上値引)はこれに該当する金額のため、適格返還請求書の発行が不要となります。

 

振り込み方法によって適格請求書の扱いが違う


適格請求書の取り扱いは、振込方法によって異なるため、細心の注意が必要です。銀行窓口、ATM、インターネットバンキングなど、様々な振込方法における適格請求書の発行と保存に関する具体的なガイドラインを以下に示します。
この制度の対象となるのは、前々年度の課税売上高が1億円以上の事業主となっており、個人事業主の場合も同様の基準が適用されることになっております。

銀行窓口で振り込む場合について


買手側が金融機関の窓口を利用して振込手数料を自社で負担する場合、この手数料に関しては金融機関から発行される適格請求書の取得が必要となります。
この適格請求書は、インボイス制度に準拠しており、正確な記帳と記録の保持が求められます。
買い手側は、適格請求書を受け取った後、この請求書と関連する帳簿を適切に保管する必要があり、これはインボイス制度の遵守を確実にするために重要であり、税務上の正確な処理を保証するためにも不可欠です。
したがって、金融機関での振込手数料に関する取引を行う際には、これらの手続きと記録の保持に細心の注意を払うことが求められます。

インターネットバンキングを利用する場合について


インターネットバンキングを利用して自社負担で振込手数料を支払う際は、金融機関から提供される適格請求書の保存が必要です。
インターネットバンキングでは、通常、紙の請求書は発行されず、代わりに電子形式で提供されることが多いため、振込時に表示される適格請求書をダウンロードし、しっかりと保存することが求められます。

また、インボイス制度に準拠した適切な記帳を行い、電子帳簿保存法に則って適格請求書や関連帳簿を保存することも重要です。2024年1月1日以降の取引においては、電子帳簿保存法の要件を満たす形で、データのままの保存が義務付けられています。
これは電子取引に該当し、電子データの改ざん防止や保存期間の確保など、法的要件を満たすための取り組みが必要となります。
従って、インターネットバンキングでの振込手数料の扱いに関しては、適格請求書の確実な保存と適切な帳簿の管理が、インボイス制度と電子帳簿保存法の双方の要件を満たすために重要なポイントとなります。

銀行ATMで振り込む場合について


ATMを使用して振込手数料を自社負担で振り込む場合、ATMが3万円以下の取引においては「自動サービス機」として適格請求書が不要とされるケースに該当します。
このため、3万円以下の取引ではATM利用時の適格請求書の取得は必要ありません。
しかし、税務上の正確な記録として、帳簿には仕入税額控除の根拠となる情報を明記する必要があるため、この記載には、具体的な取引場所を含めることが重要であり、例えば、銀行名と支店名を入れたりします。
このように帳簿への適切な記載を行うことで、税務上の要件を満たし、仕入税額控除の適用を受けることが可能となり、インボイス制度に準じた適切な税務処理の一環として非常に重要です。

 

プラスアルファの知識!適格返還請求書とは?


インボイス制度の開始によって必要な対応についてこれまでの記事でも多く解説してきましたが、今回は商品が返品された場合や取引先に販売奨励金を支払う場合に交付が必要になる「適格返還請求書」についても触れてまいります。
適格返還請求書は、「返還インボイス」と呼ばれることもあり、適格請求書発行事業者が、なんらかの理由で返品や値引きにより売上の返還を行う際に交付するものです。適格請求書発行事業者は、この適格返還請求書の交付・保存も義務付けられています。
発行が必要となるのは、

・商品の返品が発生した場合
・商品の値引きをした場合
・販売奨励金を支払った場合
・事業分量配当金を支払った場合

などがあげられます。
上記のような返金などを行うのと同時に発行、交付が必要となります。なお、インボイス制度導入後は、適格請求書と同様に適格返還請求書も仕入税額控除の適用要件となるので注意してください。
また、金額が税込1万円以下の場合は、適格返還請求書(返還インボイス)の交付義務が免除となります。

適格返還請求書の記載要件について


続いて、適格返還請求書の記載要件について解説します。正しい経理処理をするためには、要件を満たす必要があります。フォーマットの規定はありませんが、受け取り手がわかりやすいように必要情報を記載しましょう。記載要件は下記の通りです。なお、適格請求書と同様に、記載要件を満たしてる納品書、明細書も適格返還請求書として認められます。

(1)適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
(2)対価の返還等を行う年月日
(3)対価の返還等の基となった取引を行った年月日
(4)対価の返還等の取引内容 (軽減税率の対象品目である旨)
(5)税率ごとに区分して合計した対価の返還等の金額(税抜き又は税込み)
(6)対価の返還等の金額に係る消費税額等又は適用税率

 

 

 

 

 

参考:国税庁「適格請求書等保存方式の概要」

また、適格請求書同様、適格返還請求書にも写しの保存義務があります。保存期間は、課税期間の末日の翌日から2ヶ月を経過した日を起点に7年間となります。保存形式・保存方法は、紙面、電子メール、インターネット上での電子データによるものが認められています。

 

まとめ


企業間で送金する際に生じる振込手数料の支払いに関しては、法律で、請求書を受け取る側にあることが原則となっております。

これはインボイス制度がスタートしてからも変わることはありません。また、その際の会計における勘定科目の処理に関しては、手数料の振込側は「支払手数料」、受取側は「売上値引」となる場合があります。BtoB決済という新たな選択肢が広がりつつあります。
この選択肢が浸透すれば、企業が抱える振込手数料に関する課題の解消のきっかけとなり得るかもしれません。

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執筆者 U.S

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