
「3年で3割」は、もう何十年も変わっていない
「新卒は、3年で3割が辞める」。採用の世界では有名な話だ。実際、厚生労働省の最新の調査(令和4年3月卒)でも、大卒で3年以内に辞めた人は33.8%。高卒だと37.9%。ざっくり3〜4割が、入って3年のうちに、最初の会社を去っている。
面白い——というか、少し怖いのは、この数字が、もう何十年も、ほとんど変わっていないことだ。景気が良くても悪くても、売り手市場でも買い手市場でも、だいたい「3年3割」に落ち着く。これだけ動かないと、もはや景気や個々の会社の問題というより、構造的なものなのかもしれない、と思えてくる。
会社の規模で、けっこう差が出る
ただ、中身を見ると、差もある。同じ大卒でも、1,000人以上の大企業だと3年以内の離職は27.0%。一方、5人未満の零細企業では、57.5%。規模が小さいほど、辞める割合は高い。
理由もいろいろ言われている。「就社より、就職」——会社そのものに尽くすより、自分のやりたい仕事を大事にする、という若い人の意識。入ってみて感じる、理想と現実のギャップ。給与や働き方の条件。どれも一理ある。でも、結局のところ、「3年3割」という大枠は、そう簡単には動かない。
採用は、3つの段階でできている
ここで、少し整理したい。昔は、「いい人さえ採れれば、それでいい」という感覚だったと思う。でも、いまは、もう少し時間の流れで考えたほうがいい。採用は、大きく3つの段階でできている。
ひとつめは、入口。いい人を入れる。ただ、ここでの「いい」は、たんに優秀、ということより、会社のミッションやビジョンに合っているか、だ。入口でのミスマッチを、できるだけ減らす。ふたつめは、入ってから。オンボーディングで立ち上がりを助け、教育で伸ばし、働きやすさを整えて、辞めさせない。ここは、いまも間違いなく大事なところだ。そして、みっつめが、辞めた後。これまで、ほとんど手がついてこなかった領域だ。辞めた人と、つながり続ける。
大事なのは、この3つが「①から②へ、②から③へ乗り換える」という話ではない、ということだ。昔は入口だけを見ていた。それが、ビジョンとのマッチや定着へと広がり、そこにさらに「辞めた後」が”足されて”いく。どれか一つに移るのではなく、どれも重要になっている。
だからこそ、「辞めた後」を足したい
そのうえで、と思う。3年3割は、たぶん止められない。①も②も一生懸命やっても、それでも一定の人は辞める。だとしたら、これまで空白だった③「辞めた後」を、ちゃんと足す意味は、大きい。
3年で辞めた新卒は、失敗でも、敵でもない。数年よそで力をつけて、戻ってくるかもしれない。別の会社で、今度は取引先として関わるかもしれない。誰かを紹介してくれるかもしれない。いちばんもったいないのは、辞めた瞬間に、その縁がぷつりと切れてしまうことだ。せっかく一緒に働いて、その人のことが分かっているのに。
私たちが、やりたいこと
私たちがやりたいのは、この「辞めた後」まで含めて、人とのつながりを溜めておける場所を、会社が持てるようにすることだ。
溜めておくのは、辞めた人だけじゃない。まだ働いたことがない人、働くことに興味を持ってくれた人、応募してくれた人、そして一度入って辞めていった人。そういう、いろんな濃さのつながりを、会社の外にも溜めておく。その関係を、切らさずに持ち続ける。それこそが、これからの会社の力になると思っている。3年3割を嘆く代わりに、辞めた後の縁も、そこに溜まっていくつながりの一つとして、持っておく。
辞めても、切れなくていい
「3年で3割」を、お題目のように嘆いても、たぶん数字は変わらない。それより、入口も、在職中も、そして辞めた後も——ぜんぶ大事にする。とくに、これまで空白だった「辞めた後」に、どうつながっているか。そこを、これから考えたい。
若い人は、動く。それは、止められない。でも、辞めたら終わり、である必要は、どこにもない。辞めても、切れなくていい。その先に、もう一度一緒に働く未来だって、あるのだから。