冒頭挨拶
池田吉来(以下、池田):株式会社Payment Technology(以下、Payment Technology)がお送りするスタートアップ応援ラジオ番組「IPOは通過点」パーソナリティの池田吉来です。
上野亨(以下、上野):Payment Technology代表の上野亨です。
池田:今日も素敵なゲストがいらっしゃっていますのでご紹介いたします。株式会社リーディングマーク(以下、リーディングマーク)代表取締役の飯田悠司さんです。よろしくお願いいたします。
飯田悠司(以下、飯田):よろしくお願いします。
池田:それでは、絶好調のリーディングマークさんですが、自己紹介と会社のご紹介をお願いしてもよろしいですか?
飯田:ありがとうございます。改めましてリーディングマーク代表の飯田と申します。当社は、ミキワメというHRテック領域のサービスを手掛けており、人の性格や心の状態を明らかにする2つの独自の検査を持っています。1つは社員が検査を受けることにより、どのような人が活躍するのか活躍しないのかを明らかにして、採用のお勧め度が分かる検査です。もう1つは心の状態が分かる検査で、このままでは病んでしまうかも、辞めてしまうかもという人を特定して、心の状態と性格を踏まえた適切なケアによって休職や離職を減らすことができます。このように、人の性格や心の状態を明らかにして、採用やマネジメントを良くすることに取り組んでいる会社です。
HRテックを始めたきっかけ
上野:飯田さんと話をすると、私自身の心の状態がバレるような感じがします。
飯田:私自身はそのような技術は全く持っていませんが、私たちのサービスを使っていただくとある程度バレます。
上野:なぜそのようなサービスを始めようと思われたのですか?
飯田:学生起業で当社を始めましたので、もう16年間の歴史があります。事業のスタートは学生と企業をマッチングする就活イベントの主催からでしたが、IT事業を作らないとスケールしないだろうと思い、レクミーという事業を始めました。事業の内容としては、転職や就職活動中の方がスマートフォンで動画を撮って履歴書の代わりにするというサービスでした。このサービスは就職活動も動画の時代になるということで、メディアにも結構出していただき話題にもなりましたが、結論としては大失敗でした。失敗の理由は色々ありますが、1番は動画だけではどのような人か分からないことです。具体的には、就活の学生は真面目なので、私は何々大学の何々と申します、学生時代に1番頑張ったエピソードはテニスサークルの新入生勧誘活動です、という杓子定規の動画になり、特に人気企業が大量に見るのは現実的ではないうえに評価できないから、ある企業からは飯田さんの責任で採点してもらえますかと言われて社員総出で徹夜で採点したことがありました。このようなことがあり、動画では評価できないという結論になり、3年半程粘った挙句にクローズになった過去があります。
前置きが長くなりましたが、動画以外の方法で本質的に、瞬時に、定量的に適正を明らかにできる技術を作る必要があると思ったのがきっかけで、現在のミキワメの技術開発にシフトしたというのが背景です。
上野:失敗と言いますか、ご自分の必要に駆られた体験が元になって、心の状態が分かる専門家の方々のご協力のもとでサービスを構築したのですね。飯田さんご自身は心の状態が専門領域ではないのですね。
飯田:むしろ分からない側の人間なので、リーディングマークの組織作りも苦労しました。
心の問題やウェルビーイングを支援するサービス
池田:私自身は適正検査を使ったことはありませんが、パートナーがミキワメを使ったことがあり、回答後にポチっと出る結果で自分の特性が図星だったらしいので、すごいと思いました。
上野:ご本人にも結果を明らかにするのですか?
飯田:ミキワメの結果は本人にもお知らせします。性格と心の状態を明らかにする検査いずれも受検いただいた方には、結果を開示させていただいています。
上野:見せたくないものも含まれている気がしますが、全部を開示するのでしょうか?
飯田:まずポイントとしては、私たちの性格検査は良い悪いを付けることが目的ではないという前提があります。例えば、客観的に考えたい人と主観的に行動したい人がいたとして、別に良い悪いという問題ではないですよね。良い悪いではない検査だからこそ、ありのままの自分で答えていただくようにお願いしています。だから、結果は自己分析の参考になると思います。
心の状態に関しては、状態が良い方が優れているというように優劣があると感じられるかもしれませんが、状態が悪かったとしてもその人自身が悪いということでなく、人だから当然心の浮き沈みがあります。自分はこういう状態だから、改善のために一歩一歩こういうことをやろうと、自分自身や場合によってはサポートをする上長、人事の方が認識すればいいと思います。ですので、特に見せたくない内容は含まれない設計にしています。
上野:社会的にも心の問題やウェルビーイングが経営課題になっていますので、このようなサービスはなくてはならない存在になりそうですね。
飯田:ありがとうございます。そうなるように進めています。
組織崩壊の苦労話
上野:先程の会話の中で、組織作りで困ったという話がありましたが、このようなサービスがあれば、ご自分の会社経営の苦労も緩和されたと思いますか?
飯田:まさにそうですね。組織が苦しかった話ですが、2014年から17年頃まで手掛けていたレクミーがうまく行かなかった時代に、組織の状態も非常に苦しくなりました。事業が伸びている時は売上がすべてを癒すという言葉があり、整っていない組織でも成果が上がれば問題が表面化しないことが多いですが、うまく行かなくなった時に何が悪いのかという議論になります。私の反省としては、今と同じように当時も人の自己実現を支援したいというミッションを掲げていましたが、組織内で何を大切にしたいのか価値観が抽象的で、組織をまとめ上げるのにワークしていなかったことです。
ビジネスがうまく行かない犯人探しが始まると、例えば前職ではこう進めていたとか、何とかという本にはこのように書いていたなど、お互いが自分の経験上のやり方を好き勝手に言い始めます。そのどれも正解で、結局何を目指してどのように進めるのかという合意がほとんどなされていなかったので、内向きの議論がどんどん大きくなり、嫌気が差して辞めていくという現象が起きました。一人ひとりの心の機微がわかれば良かったのですが、誰が不満を抱えているのだろうとか、誰が辞めるのだろうとか、そういう恐れを抱きながら仕事をする毎日でした。ですので、一番大事なのはミキワメのようなツールよりも、会社の求心力、会社の軸をきちんと強く作って、従業員と握ることだと思います。そこは企業さん自身で対応いただくしかない部分ですが、一方で人の心の動きを可視化できるツールがあったほうがいいなというのが、ミキワメウェルビーイングサーベイという検査を作ったきっかけです。
上野:経験を完全に活かしていますね。柱が1本あり、それとは別に心の状態があり、この2つがうまく回り始めると会社は良くなるということですね。
飯田:おっしゃる通りです。
上野:現在は業績も絶好調ですから、会社はいい状態ではないですか?
飯田:2020年に性格検査、適正検査のミキワメをリリースし、2022年にはミキワメウェルビーイングサーベイで心の状態を明らかにする検査をリリースして、いい人を採用してから健やかに働き続けていただくことまで一気通貫で支援できる体制になりました。ちょうど2020年はコロナで主軸事業である採用イベントができなくなり、売上が7割ぐらい落ちて倒産してもおかしくないくらいの非常に苦しいウィズコロナのスタートでした。ただ、その頃はミッションとバリューが明確でしたので、メンバーが団結してくれました。そのメンバーの力でイベントをオンラインに転換して、会社を維持しながらミキワメの新規事業を一気に立ち上げて成長軌道に乗りました。
上野:それはすごいですね。
飯田:ありがとうございます。そのような感じで4年ほど経ちましたが、社員数も30人から120人まで急拡大して業績好調で組織の雰囲気も良いのですが、新しい幹部を増やすとかバリューをもう一度メンバーに深く浸透させるなどの新しい組織課題が出ています。
上野:会社のステージによって課題はまったく変わるので尽きないですね。
ウィズコロナを乗り切った資金調達
上野:話がガラッと変わりますが、このメディアではいつも資金調達についてお聞きしています。創業から採用を中心に事業を手掛けて、コロナを迎えてからミキワメの新事業を開始と会社のステージごとに資金を調達してこられたと思いますが、時間軸を追って教えていただけますか?
飯田:まずは、2020年以前はレクミーが失敗しましたが、このタイミングまでにエクイティで5、6億円を調達し、大部分を事業の失敗で失ったという残念な過去がございます。資金調達にはエクイティファイナンスとデットファイナンスがありますが、コロナで2020年4月時点で売上が7割ぐらい減少することが分かりましたので、キャッシュ確保のためにデットファイナンスで調達しました。普通は7割減の状態でデットファイナンスはできないと思いますが、当時はコロナで苦しい会社を救済するという政府の支援、制度融資がありましたので、政策金融公庫や商工中金にサポートをいただいて急場を凌ぐキャッシュを得ました。その後にエクイティで2回ほど資金を調達しました。デットで調達した資金は当然返す必要があるので、一気にキャッシュポジションが苦しくなりますし、ミキワメはSaaS事業なので先行投資が嵩みます。そのような背景がありアフターコロナの2回のエクイティで13億円くらい調達しました。
上野:簡単に13億と言いますが、なかなか出てこない金額ですよ。
飯田:昔の株主さんがファンドの満期のタイミングだったので、新しい株主さんに持ち直していただいた資金もあります。ビフォーコロナで5、6億円、その後に約13億円調達してキャッシュとしての累計調達金額は約17億円です。
上野:エンジェル投資家もいらっしゃるかもしれませんが、恐らく調達先はベンチャーキャピタルと事業会社が大きいと思います。その辺りを聞かせていただけますか?
飯田:今はベンチャーキャピタルさんが中心です。ただ、事業会社ではマネーフォワードさんに直近のラウンドに入っていただいています。
上野:事業会社とベンチャーキャピタル、どちらに入ってもらいたいなどのポリシーはありますか?
飯田:事業上のシナジーがあれば、事業会社さんに入っていただきたいと考えています。特にマネーフォワードさんは、労務管理などの人事の基盤となるサービスをお持ちです。私たちは、採用や組織作りをもっと良くする人事の応用編のようなプロダクトなので、基盤と応用という点で相性がいいだろうと考えました。加えてカルチャーの作り方や、1つのプロダクトから重層的に機能を積み重ねるSaaS事業の立ち上げ方は、私個人としては日本の経営モデルのベストプラクティスとして大変尊敬しておりご指導いただきたい気持ちもあって、マネーフォワードさんにお願いをさせていただきました。
上野:飯田さんからアプローチされたのですね?
飯田:マネーフォワードの辻社長や役員の方に何度かご挨拶をしたことがある程度でしたが、以前からお付き合いがある方に相談させていただきました。というわけで、シナジーがあれば事業会社さんにも入っていただきたいのですが、HR領域では直接的なシナジーのある会社さんが限られます。一方で、人材系の会社さんの場合は、そのカラーが強くなるのでメリットもあれば難しい部分も出てくるかもしれないと考えており、直近ではマネーフォワードさんだけです。他にも事業会社2社に入っていただいていますが、大部分はベンチャーキャピタルさんです。
上野:私も調達時に事業シナジーを狙う場合は、自分たちと一番大きなシナジーが生まれるところから話をしようとアドバイスすることが多いのですが、飯田さんはそれを実行されていますね。
飯田:やはり、マネーフォワードさんが最大級のSaaSの1つなので、とてもありがたいご縁だと思っています。
上野:ベンチャーキャピタルは恐らくあまり色がないと思いますが、何か選び方はありますか?
飯田:ポリシーを持って株主を選んでいるつもりではありますが、コロナの前は事業作りに非常に苦労してキャッシュが底をつきかけたことが何度もありますので、出資してくださる方であれば結構幅広くお願いをさせていただきました。株主の皆様は素晴らしい方々ですが、私たちの事業が行き当たりばったりだったこともあり、軸となるリードキャピタルはなく、株主さんの比率は非常に細かく割れていました。それ自体は悪いことではないと思いますが、SaaSのような一定のフェーズまでは何度か大きな調達をしなければいけないモデルでは、1回目だけではなく2回目、3回目もフォローして応援してくださるようなリードベンチャーキャピタルさんが必要だと考えまして、リードをどこにお願いするかはアフターコロナの資金調達の際にはこだわった点です。
リード投資家の口説き方
上野:リードを引き受けるベンチャーキャピタルもあれば、そうでないところもありますよね?リードの引き受けを口説くのは一番苦しいと思いますが大変でしたか?
飯田:大変でしたね。
上野:どれくらいの時間がかかりましたか?
飯田:特に2021年5月のアフターコロナの最初の調達は、ミキワメのスタートからまだ1年強でお客様も130、140社くらいでしたので、アーリーフェーズかつ業績が回復し切っていないタイミングでした。そのため、ポテンシャルを評価いただいての調達でしたのでとても苦労しましたし、ありがたかったです。時間はかかりました。
池田:リード投資家を集めるのは、どのような大変さがありますか?
飯田:まず、リードは誰でも引き受けることではありません。企業を応援し続ける資金力と、成果を上げた実績の両方がないとリードにはなっていただけません。日本全国に何千何万という選択肢はありませんので、ピックアップすること自体が難しいです。
上野:フォローで2番手、3番手の投資をするところはたくさんありますが、リードを取るということはフォローの人たちの代表として株価を算定する機能を果たさないといけないし、資金力を含めてこの後も応援して付き合っていく面も必要になるので、そもそも手を挙げるベンチャーキャピタルが少ないですよね。
飯田:そうなんです。だから、リードを取りうるベンチャーキャピタルさんにお会いしてきちんとディールをまとめられるかどうか、何が何でも成功することを担保できるかどうかがポイントになると思います。
池田:リード投資家を口説くことについて、飯田さんのポイントは何ですか?
飯田:当社のリードはフェムトパートナーズさんというベンチャーキャピタルさんですが、SaaS企業ではプレイドさんを外部筆頭株主としてIPOまで導いた実績があります。プレイドさんは非常に大きなIPOでしたので、担当されていた曽我さんというジェネラルパートナーの方は、その年のフォーブスのベンチャーキャピタリストランキングで2位か3位の上位にランクインされた実績をお持ちの方です。ポイントとしては、もちろん経済合理性をきちんと試算して投資いただいていますが、ご期待をいただけたことだと思います。というのは、10年くらい前に他のベンチャーキャピタルさんが主催する交流会で曽我さんにご挨拶させていただいたことを覚えていてくださいまして、コロナで大変だったのに頑張っていますねと言っていただいたので、粘り強く頑張る人だとご期待、ご評価をいだいたのが大きいかと思います。そもそもベンチャーキャピタルは投資した資金は回収しなければならないので、将来の業績やフリーキャッシュフローを予測して、IRR何パーセントという財務モデルを現在に引き戻して組み立てたうえで投資の合理性を判断します。今はよりシビアに見られる時代だと思いますが、投資の合理性の期待値が大きいというよりはポテンシャル期待や経営者期待が大きかったと思います。本当にありがたくもご期待いただいたということだと理解しています。
上野:半端な金額ではないわけですし、最大の応援団でもありますよね。
飯田:おっしゃる通りですね。本当に応援いただいています。
上野:ある意味、同じ船に乗っていただく方と出会えたのはすごいですね。ポテンシャル評価での調達は、さすがだと思いました。
池田:ある種のビジネスモデルを超越した経営者の人間力が大事だと改めて気づきを得ました。あと、とても意外だったのは、飯田さんとこの1年半から2年弱お付き合いをさせていただいていて、ロジカルにスマートに経営されている方だと思いきや、徹夜で動画1個1個を見た話もあり、どのような場所からでものし上がるエネルギッシュさとパワフルさを改めて感じて、違う一面を垣間見ることができてとても楽しかったです。
飯田:ありがとうございます。
池田:最後に、飯田さんから是非リーディングマークさんの宣伝やPRをお願いします。
飯田:お伝えしたいことは2点です。1点目は私の原体験も踏まえ、組織で苦しむ社員や組織崩壊で苦しむ経営者を減らしたいということです。会社さんに合った人を採用して、幸せに働き続けていただくための仕組みを作ることは非常に重要ではありますが、簡単ではないと思います。ご興味のある方は、ミキワメやミキワメウェルビーイングサーベイを一定期間無料で提供させていただきます。このポッドキャストを聞いていただいた方であれば、データの解析や解説もさせていただきますので、ご連絡をお待ちしています。
上野:ご連絡は私たちを通じていただいても結構ですし、飯田さんのFacebookなどに直接でもどうぞ。
飯田:もう1点、私たちはお聞きいただいたように行き当たりばったりで気合いで生き残ってきましたが、今は面白い位置にいると思います。単にデータを整理するDXクラウドの時代から、どのような行動をすれば成果が上がるかを予測して支援できるようなAIのシステムが求められる時代になってきました。私たちは性格や心の状態を可視化するAIの教師データを膨大に持っており、これから第3、第4の機能を作りAI時代のHRプラットフォームのナンバーワンになることから逆算してチャレンジしていますので、すべての職種を積極採用中です。ご興味いただいた方は、第一面接は私が対応させていただきますので、ぜひご連絡いただけるとありがたいです。
池田:絶賛成長中ですね。
飯田:ありがとうございます。
池田:今日の素敵なゲストは株式会社リーディングマーク代表取締役飯田悠司さんでした。ありがとうございました。
飯田:ありがとうございました。
本内容の音源は以下のURLからご視聴ください。
IPOは通過点 #8 株式会社リーディングマーク 代表取締役社長 飯田悠司様 – YouTube
■出演企業 概要
会社名:株式会社リーディングマーク
本社:東京都港区虎ノ門3丁目8番21号 虎ノ門33森ビル 10階
代表者:代表取締役社長 飯田 悠司
企業URL:https://www.leadingmark.jp/