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受け取り方を、ずっと考えてきた
私たちは給与のことをずっと研究してきた。もらう金額の話だけではなく、「どう受け取るか」という部分も、けっこう長く考えている。以前は「AnyPay」というサービスもやっていた。給料をデジタルマネーで受け取るための仕組みを考えたものだ。だから今回の「口座レスで受け取る」という海外の話は、私たちにとってはわりと馴染みのあるテーマだったりする。
日本の給料は、そもそも「本人へ直接」が原則
まず前提の話をさせてほしい。日本では、賃金は現金で、働いた本人に直接手渡すのが原理原則だ(直接払いの原則)。あいだに人が入ってはいけない。なぜかというと、たとえば紹介した人が代わりに給料を受け取って、そこから働いた人に渡すような形になると、途中でピンハネされる余地が生まれてしまう。それを防ぐために、現金は本人へ直接、と法律で決められている。
面白いのは、いま当たり前になっている「振込」も、もとはこの原則の“例外”として認められたものだ、という点だ。本人が指定した銀行口座に振り込むなら、直接手渡しの代わりとして認めましょう、と。あまり知られていないけれど、銀行だけでなく証券の口座で受け取る道もある。そしてさらにその例外として生まれたのが、資金移動業者──いわゆる◯◯Payのようなサービスでの受け取りだ。
資金移動業者での受け取りは、けっこうな議論の末にできた
この資金移動業者での受け取りは、するっと決まったわけではない。「これで給料を受け取っていいのか」という議論が、3〜4年前にかなり熱心に交わされた。その末に、ようやく今のルールにたどり着いている。制度になってしまうと、あとから問題視する人は少なくなるものだけれど、当時はずいぶん大変な議論があった、というのは覚えておきたい。
海外にも似た動きはある。ただ、海外の場合は日本ほど「現金を本人へ直接」という原則が厳格でなく、少し曖昧なところがあるからこそ、すっと成立している面もあるのかなと思う。日本はかなり厳しい国だ。それでも資金移動業者で受け取れるルールが通った。だとしたら、これを使わない手はない。手軽に受け取れる方法は、これからどんどん増えていくだろう。
しかも、資金移動業者での受け取りには上限(100万円など)が決まっている。事故が起きないように、各社が独自にもっと低い上限を設けている場合もある。一見すると制約だけれど、こうしたルールがあることで、働く人が守られる仕組みにもなっていると思う。
本当の課題は、「知られていない」こと
最近は◯◯Pay側の本人確認もかなり厳しくなっていて、登録の手間がどれくらいか、という心配はあるかもしれない。ただ、私はこれを手間の問題とはあまり捉えていない。それよりも、「給料はいろいろな形で受け取れる」という事実そのものが、まだあまり知られていない。ここがいちばんの課題だと思っている。知られていけば、働く人の側から「じゃあこう受け取りたい」というニーズが、いろいろ出てくるはずだ。
AnyPayで考えていたのは、「どこで」より「どの割合で」
ここが、私たちがいちばん面白いと思っているところだ。AnyPayで考えていたのは、「どこで受け取るか」よりも「どういう割合で受け取るか」という、割り振りの仕組みだった。たとえば、働いた給料のうち、50%は銀行口座で、20%は証券で、残りの30%はデジタルマネーで受け取る。そんなふうに、自分で割合を決められるようにする。そういう仕組みを考えて、特許を取りに行ったりもしていた。
受け取り方を自分で決める、というのは、値段を自分でつける「いくら」と同じ方向の話だと思う。金額も、受け取り方も、働く人の側から決めていける。個人を起点に組み直す、という私たちの考え方に、きれいに乗る。
ただ、多様なら便利、とは限らない
とはいえ、正直に書いておきたいことがある。受け取り方のパターンがいろいろあっていい、とは思う。でも、その多様さが必ずしも「便利さ」に直結するかというと、そこはまだ少し疑問が残っている。選択肢が多いことと、使いやすいことは、同じではない。何が正解なのかは、まだ分からない。だからこそ、私たちはこれからも試しながら、模索を繰り返していきたいと思っている。