2026/09/11
採用

初任給30万円時代の、静かな変化

初任給30万円時代の、静かな変化

初任給30万円が、「普通」になってきた

新卒の初任給が、どんどん上がっている。帝国データバンクによると、2026年度に初任給を引き上げた企業は67.5%。約7割だ。就職人気の高い企業20社のうち、16社が30万円以上。少し前まで、初任給30万円は外資や一部の高収益企業の話だったのに、いまは大手・人気企業では「まず30万円出せないと、土俵に上がれない」くらいの前提になってきた。27年卒はもう40万円だ、という声さえある。「初任給バブル」なんて言葉も出てきた。

金額の話としては、働く人には、いい流れだと思う。でも、この裏で、もっと大きな変化が、静かに進んでいる気がする。

「新卒はみんな一律」が、崩れてきた

日本の新卒採用は、長いあいだ「横並び」だった。同じ会社に入れば、初任給はみんな同じ。学部や職種が違っても、スタートは一律。それが、当たり前だった。

その一律が、崩れ始めている。ITやデータ系のエンジニアは、新卒でも30万円を軽く超える。金融も競って上げている。職種によって、スタートの金額が、はっきり変わってきた。極端なところでは、中堅企業で新人の初任給を上げた結果、何年も働いてきた先輩を、金額で追い越してしまう——そんな逆転まで起きている。「新卒だから、みんな同じ」という前提が、あちこちで、ほころびはじめている。

上がる仕事と、絞られる仕事

もうひとつ、対照的な動きがある。初任給を競って上げる職種がある一方で、採用そのものを絞る職種も出てきた。たとえば、みずほフィナンシャルグループは、今後10年で事務業務を最大5000人分減らす方針だという。AIに置き換わっていく仕事では、そもそもの採用数が減っていく。

上がる仕事と、絞られる仕事。この差が、はっきりしてきた。給料が「入社何年目か」ではなく、「どんな仕事を、どれだけできるか」で決まっていく。その方向に、少しずつ動いている。

「一律」の終わりは、ジョブ型への入口かもしれない

考えてみると、これは「ジョブ型」への入口なのかもしれない。ジョブ型は、職務やスキルで人を処遇するやり方だ。その反対にあるのが、日本で長く続いてきたメンバーシップ型——まず人を採って、会社の中で横並びに育てていく、という形だ。初任給の一律は、そのメンバーシップ型の、いちばん入口にある象徴だった。

その一律が崩れるということは、メンバーシップ型そのものが、静かにほどけはじめている、ということだと思う。そもそも、いまの働き手の多くは、終身雇用を前提にしていない。一つの会社に一生、とは思っていない。終身雇用が崩れれば、行き着く先は、ジョブ型だ。もう「一律」のままでは、成立しない。

正しく証明するから、正しく評価される

ジョブ型が前提の世の中になっていくのなら、いちばん大事になるのは、一人ひとりが、自分のスキルや経験を、はっきり示せることだ。何が、どれくらいできるのか。それを、正しく証明する。正しく証明するからこそ、正しく評価される。

逆に言えば、証明できなければ、正しく評価もされない。ジョブ型は、うまくいけば「できる人が、ちゃんと報われる」世界のはずだ。でも、そのためには、スキルや経験を正しく示して、正しく測る、という環境が要る。

正しく証明するから、正しく評価される。私たちは、タレントバンクの仕組みを使って、そこにチャレンジしていきたいと考えている。

一律の終わりの、その先へ

初任給が上がる、というニュースの奥で、「新卒はみんな一律」という日本の当たり前が、静かに終わりかけている。その先にあるのは、たぶんジョブ型の世界だ。

そこで問われるのは、金額の大小よりも、「あなたは何が、どれくらいできるのか」を、ちゃんと示せるかどうか。正しく証明できる人が、正しく評価される。そういう環境をどう作っていくかが、これからの、本当の宿題なのだと思う。

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