2026/08/14
採用

店長は、たぶん真面目すぎる

店長は、たぶん真面目すぎる

「代わりが、見つからない」

昨日、タレントバンクを使ってくださっている企業の役員の方々と会食した。そこで聞いた店舗の話が、頭から離れない。

世間では、店長の過重労働やサービス残業がよく批判される。ただ、現場の実感はもう少し手前にあるらしい。店舗はアルバイトやパートの人たちで回っている。だれかが急に休む。すぐ代わりが見つかればいい。見つからないと、最後は店長が自分でシフトに入って穴を埋める。この「代わりが見つからない」が、過重労働のいちばん奥の原因なんじゃないか。そういう話だった。

数字を見ても、無理が積み上がっている。飲食では、2025年10月の時点で「非正社員が足りない」と答えた店が53.4%。半分を超えている。休憩も取れない、店長やオーナーが現場に入り続けて休みは月0日、という話も珍しくない。その受け皿として、スポットワークが伸びている。利用者はもう2,200万人規模。タイミーの2026年2〜4月だけでも、募集は395.6万件、稼働は2,598万時間にのぼる。人が足りないから、その日だけ来てくれる人に頼る。合理的ではある。ただ、頼りきりになると、また別のしんどさが出てくる。

板挟みを、自分ひとりで引き受けてしまう

会食でいちばん感じたのは、店長がとにかく真面目だ、ということだった。

数字はちゃんと追わないといけない。目の前にはお客さんがいて、その人たちにいいサービスを届けたい。この思いが強ければ強いほど、「会社の思い」と「目の前のお客さんの思い」の板挟みになる。そして、どうにかできるのは自分だけだ、と思い詰めてしまう。だから最後は、自分に負荷が来る。人手が足りないときに店長がシフトに入るのは、根性論というより、真面目さの帰結なんだと思う。

力関係の歪みも、そこに重なる。人が足りないと、来てもらう側の立場が弱くなる。「シフトに入ってほしい」と頼むと、「嫌だよ」と断られる。「どうしても出てほしいなら、何か見返りを」という空気にもなる。店長が自腹でご飯を奢って、なんとか来てもらう。そういう関係に疲れて、通常のバイトには頼めない、とスポットワークにさらに流れていく。

タイミーが、「時間の概念」を変えてしまった

もうひとつ、採用の現場で起きている変化がある。

タイミーが当たり前になって、「時間」というものの感覚が、根っこから変わった。これまでのアルバイト採用には、暗黙のルールがあった。「週3日は出てほしい」「日曜は必須」。それを満たさない人は採らない。そういうスタンスだ。

でも、とくに若いワーカーは、スキマバイトが前提の時間感覚で生きている。だから「週2日来てください」と言われると、「じゃあ結構です」と、あっさり別のところへ行ってしまう。結果として、採れる人がどんどん減っていく。

やっかいなのは、採用する側が、この「取れる人が減っている」という現実に、まだ追いついていないこと。少しずつ、感覚がズレている。タイミーの出現は、穴を埋める便利な手段であると同時に、これまでの採用のあり方そのものを、いろんな意味で壊しているんだと思う。

変えるべきは、たぶん「採用する側の概念」

ここまで来て思うのは、変わらないといけないのは、働き手より先に、採用する側の概念なんじゃないか、ということだ。

「週3・日曜必須の人だけ採る」という前提のままだと、母集団はやせ細っていく。だったら、入り口を広げる。週2でも、単発でも、日曜だけでも、いろんな関わり方の人を、まとめて抱えておく。そのための器が、タレントプールだ。

タレントバンクは、これまで「アルムナイ(辞めた人)を貯める」ことを大事にしてきた。でも、それだけじゃ足りない。これからは、店舗の「ファン」、つまりその店で働きたい・また関わりたいと思ってくれる人を、どんどん探してプールに引き入れたい。お客さんとして店が好きな人、昔働いていた人、近所の人、一度応募してくれた人。ファンになりうる人は、実はその店の周りにけっこういる。これまでは、つなぐ器がなかっただけだ。

1店舗あたり数百人規模のプールがあって、しかもそれがちゃんと稼働する。急に穴が空いても、プールの中から手が挙がる。週2の人も、日曜だけの人も、単発の人も混ざっている。そうなれば、穴埋めのしんどさも、時間感覚のミスマッチも、同じ器の中で少しずつ解けていく。

涙が出るくらい、頑張っている

店長たちは、本当に真面目だ。涙が出るくらい頑張っている。その人たちが、これ以上ひとりで板挟みを抱えなくていいように。急な欠勤で青ざめることも、頼み込んで自腹を切ることも、減らしていきたい。

個人が自分の価値を示す、企業と人が直接つながる。私たちがずっと言ってきたことの、いちばん人間的な使いどころが、たぶんここにある。店長が倒れないための安全網を、つながりで作る。どうにかして、彼らの力になりたい。もっと頑張らないと、と心から思っている。

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