これまで給与の受取方法として、銀行口座の振込が主流でしたが、それが変わろうとしています。
それは電子マネーなどによるデジタルマネーによる受取が可能になるというものであり、それに伴い制度の整備や審査が行われております。
では実際には給与のデジタル払いとはどのようなものでしょうか。
この記事では給与のデジタル払いによるメリットやデメリットを含めたデジタル払いによる変化を紹介していきたいと思います。
【エニペイとは?】
給与のデジタルマネー払いが可能
1.企業が銀行の口座を介さず、スマートフォンの決済アプリや電子マネーを利用して振り込むことができる。
2.従来の口座以外に給与を振分け可能
デジタルマネーを含む指定した受け取り方法で、証券口座や給与を最大5口座に振り分けることのできる
3.ビジネスモデルの特許を取得済み
従業員の給与債権の登録ができ、一定の日付・方法で給与の全部又は一部を繰り返し支払い、その結果を保持しておくことができるシステム【特許第6928708号】
目次
「給与デジタル払い」とは
給与デジタル払いとは、銀行を経由せずに、バーコード決済などの資金移動業者のサービスを使って給与を受け取る新しい方法です。
通常、給与は銀行口座に振り込まれますが、給与デジタル払いを使えば、銀行口座を持たなくても、資金移動業者が提供する支払いサービスを使って給与を受け取ることができます。
また、資金移動業者とは、銀行以外でお金の移動を行うためのサービスを提供する会社やプロバイダーのことで、これには、バーコードをスキャンするなどの方法で支払いができるスマートフォンアプリなどが該当します。
つまり、給与デジタル払いを利用することで、銀行口座を持たない人でも給与を簡単に受け取ることができる便利な方法と言えます。
給与デジタル払いのメリットを各目線から解説
電子マネーの広がりを背景に、給与のデジタル払いが実際にスタートする直前まできておりますが、これまで銀行振り込みが主流であった世の中にデジタル払いによる給与の受取が可能となるとどのような現象が発生するのでしょうか。
企業側のメリット
それでは実際には、給与デジタル払いの導入によりどのようなメリットが発生するのでしょうか。
まずは従業員側の立場から確認していきましょう。
振込手数料のコストカット
企業が最も恩恵を受ける点は、給与の支払いにかかる費用を減らせることです。
PayPayのような決済サービスプロバイダーを利用することで、従来の銀行振込に比べて資金の送金と受け取りのコストを削減が可能となり、特に日払い制度を採用し、多数のパートタイムスタッフを抱える企業にとっては、取引の回数が多いぶん、コスト削減の影響は顕著になります。
多様な人材の採用・確保
デジタル給与支払いの採用は、銀行口座を持っていない外国人の雇用拡大にもつながるかもしれません。
またこのシステムを効果的に宣伝することで、デジタル進化に前向きな企業や、従業員のさまざまなニーズに応える企業としてのブランドイメージを強化することが可能で、これまでは採用まで至らなかった人材の確保につながることも考えられます。
都度払いがしやすくなりフリーランス等との取引も円滑になる
銀行口座がなくても、銀行振り込みと同じレベルの安全性を確保したうえで、迅速なお金のやりとりが可能となるため、フリーランスや契約労働者など、より広い範囲の人々と取引が可能になります。
従業員側のメリット
次に従業員側ではどのようなメリットが考えられるのでしょうか。
実際の利用シーンを想定してみるとわかりやすいかもしれません。
現金チャージの不要
決済アプリへの直接チャージが可能であるため、銀行口座からの資金移動の手間や、現金を引き出す際の手数料が省けます。
これは、すでに電子マネーの利用経験があり、ポイントを有効に使っている人にとって特に魅力的な点です。
デジタル払いの給与残高が補償される
従業員が給与をデジタル形式で受け取る際に生じる主な心配事は、自らの給与が安全かどうかということだと思います。
もし給与を管理する指定の資金移動業者が倒産しても、給与口座の残高は保証制度により迅速に補償されるようになっています。
お金の管理がしやすくなる
給与のデジタル払いの導入にあたり、「毎月の給与の一部をデジタルで受け取る」「ボーナスは銀行振込で」といった方法で受け取りを分けることも可能で、家計の管理を容易にすることができる利点もあります。
給与デジタル払いの懸念点とはどんな便利なサービスにもメリットがあればデメリットもあるように、給与のデジタル払いに関してもその例外ではありません。
発生しうるデメリットに関しても事前に確認しておきましょう。
企業側のデメリット
それでは実際にデメリットを確認することで未来に発生が予測されるリスクを把握しておきましょう。
まずは企業側のデメリットを確認していきましょう。
振込関連業務が増加
デジタル給与支払いは、給料の受け取り方としての選択肢の一つであり、従業員にその使用を強いることはできません。
従って、デジタル支払いを選ばない従業員には、従来の銀行振込みなどの方法で給与を支払います。
ただし、デジタル給与支払いを望む従業員とそうでない従業員が混在する場合、支払い処理を別々に行う必要があり、作業量が増加する可能性もあります。
さらに、給与の一部だけをデジタルで受け取りたいという従業員がいれば、その人のために2回の振込み操作が求められることになります。
システム連携費用が発生
作業の負荷を考慮すると、給与の支払いを担当する指定資金移動業者と自動的に同期するシステムが求められます。
多くの場合、給与管理システムの業者は、これらの資金移動業者と連携して、自動化ソリューションを提供しておりますが、それでも、既存の給与システムのアップグレードや新たなシステムの導入が必要になることもあります。
給与のデジタル化を進めるかどうかは、各企業の自由な判断に委ねられているため、既存の給与システムが将来的にデジタル支払いに適応可能かどうかを見極め、それに基づいて導入の検討を進めることが推奨されます。
従業員側のデメリット
次に従業員側ではどのようなデメリットが考えられるのでしょうか。
仮に自分の勤める企業がデジタル払いの導入を行ったとしても、従業員には銀行振り込みにする選択肢もあるため、よく考えて自分にあった給与の受取方法を選びましょう。
従業員が希望する資金移動業者が使用できない場合がある
従業員がデジタル給与の受取に使用したいと希望する資金移動業者が使えないとは、従業員の使用したいとする資金移動業者のサービスが企業の給与支払いシステムや政府の規制によって承認されていない可能性があることを意味しており、厚生労働省は給与支払いに使用できる資金移動業者を認可しており、企業はその認可された範囲内でしかデジタルマネーの選択ができません。
このため、従業員が普段利用しているあらゆるキャッシュレス決済サービスや電子マネーを給与の受け取りに用いることができるわけではなく、企業が提供するオプション内から選ぶ必要があります。
給与デジタル払い用の口座上限がある
デジタル給与で受け取る口座の金額には上限があり、100万円までが上限となっております。
これはデジタル給与で受け取る資金移動業者の口座が預貯金を目的とした口座ではないためであり、支払や送金を目的としていることを理解しておきましょう。
給与デジタル払い導入にむけて企業が押さえておくべきPoint
給与のデジタル払いを導入するかどうかは企業が選択できますが、導入を選択した場合は新たに労使協定を結ぶ必要があるなど、対応すべき事項があるので注意が必要です。
1.労使協定の締結が必要
給与をデジタル形式で支払うことにする際には、会社は労働組合、あるいは労働者の過半数の代表と共に労使協定を結ぶ必要があります。
合意に至るためには以下の点を明確にしておくことが大切です。
・適用対象者: どの従業員がデジタル給与支払いの対象になるかを決めます。
・支払われる賃金: デジタルで支払う賃金の範囲と額について定めます。
・関与する金融機関: 賃金のデジタル支払いに関わる資金移動業者や証券会社を指定します。
・導入時期: デジタル給与支払いをいつから開始するかの時期を設定します。
2.希望者には同意書の提出を求めること
デジタル給与支払いは、希望する従業員のみに適用されるものであり、全員に強制されるわけではありません。
そのため、労使協定を結んだ後、そのシステムを利用したいと考えている従業員からは、同意の意思を示す書類を受け取る必要があります。
同意書の内容で重要となるのは以下の項目になります。
・指定資金移動業者口座への資金移動を希望する賃金の範囲及びその金額
・労働者が指定する指定資金移動業者名、サービスの名称、口座番号(アカウント ID)及び名義人(その他口座を特定するために必要な情報があればその事項)
・指定資金移動業者口座への支払開始希望時期
・代替口座として指定する金融機関店舗名並びに預金又は貯金の種類及び口座番号又は指定する証券会社店舗名並びに証券総合口座の口座番号、名義人
3.事前に留意事項を説明すること
デジタル給与支払いを選ぶ従業員には、事前に大事な点をしっかり説明する必要があります。
注意すべきことには、デジタル口座に入れられるお金の最大額、もし会社がお金の問題を抱えたり、お金の使い方に不正があったりしたときの保証、アカウントの使える期間などがあります。
特に、口座が乗っ取られたり、お金が勝手に引き出されたりしたときのことについては、しっかり話しておくことが大切です。
たとえば、従業員に過失がない場合は、たいていの場合、失ったお金は全額戻ってくることになっています。
それでも、家族が勝手にお金を引き出したり、従業員が資金移動業者に虚偽の説明をした場合は、保証されないことがあります。
さらに、アカウントをしばらく使っていないときのルールについては、最後にお金を動かしてから10年間はお金を取り戻せることになっております。
4.就業規則(給与規定)を改定し変更届を提出すること
給与をどのように支払うかは、会社が従業員に明確に伝えなければならない就業規則の絶対的記載事項のひとつとなっているため、会社が給料をデジタルで支払う方法を取り入れるときは、就業規則や給与規定に、新しい支払い方法に関する情報やルールを追加することが必要です。
具体的には、デジタル給与を受け取るために従業員が同意する内容や、銀行口座とデジタル支払いをどう組み合わせるかといったことを書き加えます。
PaymentTechnologyの給与DXエニペイについて
エニペイとは、毎月指定日に、デジタルマネーを含む指定した受け取り方法で給与を最大5口座に振り分けることのできるサービスです。
「企業と、従業員と、従業員の給与債権の登録ができて、一定の日付・方法で給与(又は賃金)の全部又は一部を繰り返し支払い、その結果を保持しておくことができるシステム」として当社がビジネスモデルの特許を取得しております。【特許第6928708号】
まとめ
給与のデジタル化とは、お金を電子マネーとして迅速かつ効率的に従業員の口座に直接送金するプロセスを指しており、この進展により、スマートフォンやパソコンを通じて、買い物をするかのように手軽に給料を受け取ることができるようになります。
手数料が削減されることも含め、給料の即時性やアクセスの容易さは、デジタル化の大きな利点となります。
しかしこの利便性の背景には、企業と従業員が共に慎重に進めるべき重要なステップがあり、導入前には、デジタル給与のメリットだけでなく、潜在的なデメリットやリスクについても十分に理解し、評価することが不可欠です。
セキュリティの確保、個人データのプライバシー保護、そして不正アクセスや詐欺から従業員の資金を守るためにも就業規則などを従業員と締結し企業が従業員との信頼関係を維持し、安全を提供する環境づくりが必要です。
そのためにも、企業は、新しいシステムの運用や変更に際して必要な教育やサポートを提供するために、適切なリソースを割り当てる責任があり、これより、従業員への継続的な情報提供や、疑問に対する迅速な対応を可能とします。
給与のデジタル化が成功するかどうかは、企業と従業員が共に新しい技術を理解し、適切に活用することにかかっています。
従業員のニーズに応え、企業が提供するサービスの質を高めることができれば、デジタル化はより広範な採用へと進むことが考えられます。
これまでの給与に関する企業文化の変化をもたらす可能性があることから、導入にためらいがある人もいるかもしれませんが、電子マネーによる給与の受取は効率性、透明性、従業員満足度の向上に寄与する可能性を秘めており、企業を次のステップへ移行させるかもしれません。
執筆者 B.M