2023/12/21
請求書

請求書の振込手数料の負担は支払側が原則である法的根拠について

請求書の支払いを銀行振り込みで行う場合、振込手数料が発生すると思います。
この振込手数料ですが、どちらが負担するべきなのか疑問に思ったことはないでしょうか?
今回はこの振込手数料について、どちらが支払うべきなのか法的根拠に基づいて説明していきます。

■振込手数料とは?


振込手数料とは、銀行、信用金庫、その他金融機関で資金を振り込む際にかかる費用のことです。
この手数料は、使用する金融機関や振り込む金額によって異なりますので、振込を行う前に各金融機関の手数料を確認することが重要です。振込手数料に関しては、通常、以下の2つの負担方法があります。

一つ目は「先方負担」という形式です。
これは、代金を受け取る側、つまり請求書を発行する側が振込手数料を負担する場合を指します。
具体的には、振込を行う際に、手数料分を差し引いた金額を振り込みます。例えば、請求金額が10万円の場合、振り込む金額は「10万円から振込手数料を差し引いた金額」となります。

二つ目は「当方負担」という形式です。
この場合、代金を支払う側、つまり請求書を受け取る側が振込手数料を負担します。この方法では、請求された金額を
そのまま支払い、振込手数料は別途支払う側が負担することになります。
これらの振込手数料の負担方法は、取引の合意時に明確に決定されるべきであり、どちらの負担方法を選択するかによって、振り込む金額や財務計画に影響を与えるため、注意が必要です。取引先との間で振込手数料の負担について明確な合意を形成し、誤解を避けることが大切です。

■法律上の負担取り決めと根拠


まずはじめに民法第484条、特に485条の「持参債務の原則」をみてみましょう。

(弁済の費用)
第四百八十五条 弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。

 

(出典:民法 | e-Gov法令検索 より)

弁済とは、債権者が債務を履行する(果たす)ことです。今回でいう、請求書に対して銀行振込で代金を支払う行為も弁済に含まれます。
つまり本文の「債務者の負担とする」という文から、
銀行振込の手数料は代金を振り込む側(債務者)が負担することが義務付けられています。

ただこれは「別段の意思表示がない」場合に限るため、絶対に債務者が負担しなければいけないものではありません。
基本的に手数料は債務者の負担になりますが、トラブル等を回避するためにも、
請求書には但し書きを書いておくのがベターです。

■一般的なビジネスにおける原則


「持参債務の原則」とは、ビジネス取引において支払い義務が発生した場合、その費用は支払う側が負担するという一般的な原則であるため、この原則に従い、振込手数料は通常、請求書を受け取った側、すなわち支払いを行う側が負担することが望ましいです。
特に通信販売の分野では、振込手数料の扱いがトラブルの原因になることがあります。
例えば、注文者が支払うべき振込手数料を差し引いて金額を振り込むことがあり、これがトラブルに発展することがあります。
支払いを受ける側が原則に基づいて追加の請求を行うと、注文者との間で意見の食い違いが生じることがあります。
企業間取引においても、このようなトラブルは避けたいものです。そのため、ビジネスを開始する前に振込手数料の負担者を明確に決定し、その内容を契約書に記載することが重要です。

受注側が手数料の負担に同意する場合もあるかもしれませんが、小さな金額であっても長期に渡れば大きな金額になるため、利益とのバランスを考慮することが重要です。
このため、取引の際には振込手数料の扱いを契約書に明記したり、請求書に毎回明記したりすることが望ましいです。
また、振込手数料が支払われていない場合は、その時点で速やかに取引先に問題を指摘することも大切です。
これらの対策により、取引に関する認識の齟齬を避け、円滑なビジネス関係を維持することができます。

■請求書に振込手数料の記載をしましょう


相手に手数料を負担してもらう場合には、発行する請求書に必ず振込手数料についての記載をするようにしましょう。もちろん、相手には失礼のないようにする必要があります。
以下、例文になりますので、ご参考にしてみてください。

参考 
例文:
〇恐れ入りますが、振込手数料はお客様の方でご負担していただくようよろしくお願いいたします。

■振込手数料の負担に関する注意点


振込手数料の負担に関する変更を取引先に依頼する場合、コミュニケーションの手段としてメール、正式な書面、電話などを適切に選び、礼儀正しく且つ丁寧な対応を心がけることが重要です。こうした配慮は、ビジネス関係において必要なルールとマナーであり、取引先からの信頼を維持するために不可欠です。
さらに、振込手数料の負担を依頼する際には、各金融機関や支払い方法による手数料の違いを明確に案内することが効果的です。これにより、取引先が振込を行う際の手数料を理解しやすくなり、よりスムーズな取引を可能にします。例えば、銀行の窓口、ATM、インターネットバンキングなど異なる支払い方法による手数料の違いを具体的に説明することが役立ちます。

また、もし自社が商品やサービスを販売する際に現在振込手数料を自社で負担している場合は、税理士や経理の専門家に相談し、年間でどれだけのコストがかかっているかを計算してもらうことをおすすめします。この結果に基づき、経済的な観点から手数料の負担を取引先に依頼するかどうかを検討することが重要です。もし年間で大きな金額になる場合は、取引先に対して手数料の負担の依頼について考える必要も出てきます。
これらのステップを通じて、振込手数料の負担に関する変更を適切に行うことで、取引関係の健全性を保ちつつ、企業経営の効率化を図ることが可能になります。

手数料負担をお願いする際の具体的な内容


手数料負担のお願いについて案内する際にはメールや電話、または文書で送ることが考えられますが、どの手段で案内するにも以下のポイントを抑えることで相手に内容が明確に伝わります。

・要件の明確化
「振込手数料の負担のお願い」という主旨を初めに明確に伝えることで、相手にメッセージの目的をはっきりと理解してもらいましょう。
・丁寧な挨拶
書き始めには、相手の名前を正確に述べ、日頃の感謝を表す丁寧な挨拶をすることで、良好な関係を維持することができます。例えば、「日頃より大変お世話になっております。貴社のご成功を心よりお祈り申し上げます」といった表現が適切です。
・要望の具体的説明
振込手数料の負担を依頼する理由を具体的に説明し、なぜこの変更が必要なのかを正直に伝えましょう。財務上の状況や経営戦略など、負担の要請に至った背景を明らかにすることが重要です。
・補足説明と提案
さらに、取引先が振込手数料を理解しやすくするために、銀行や支払い方法による手数料の違いを具体的に案内し、取引先が負担軽減の選択肢を持てるようサポートしましょう。
このように、振込手数料の負担に関する依頼は、取引先との信頼関係を損なわないよう、慎重かつ丁寧なコミュニケーションを心がけることが肝心です。

振込手数料の負担方針を変更する場合の注意点・マナー


万一、振込手数料の負担に関して現行の方針を変更する必要が生じた場合、その変更を行う前に、各取引先との合意を得ることが必須です。これには、取引先との個別の交渉が伴いますが、交渉は慎重に進める必要があります。もし取引先から変更に対する拒否の意向が示された場合は、その判断を尊重し、無理に変更を押し通すことは避けなければなりません。
振込手数料の負担に関するポリシー変更を提案する際には、その理由や背景を明確に説明し、取引先に理解を求めることが重要です。ただし、もし取引先が提案に同意しない場合は、速やかにその意向に従う姿勢を示すことが肝要です。
無理な変更を求めることは、取引関係に亀裂を生じさせ、最悪の場合は取引先を失うリスクにつながるため、最新の注意を払う必要があります。振込手数料の負担に関する方針を変更する際には、取引先の了解を得ることが最も重要であり、これを無視することは長期的なビジネス関係を損なうことになりかねません。
したがって、このような変更を検討する場合は、取引先との信頼関係を維持することを最優先に考えましょう。

■インボイス制度導入は振込手数料に影響ある?


2023年10月1日からスタートしたインボイス制度は課税事業者が仕入れにかかる消費税の控除を受けるために、適切な形式の請求書の保存が必須となった新しいシステムです。この制度の導入により、仕入税額控除を適用するためには、消費税が適正に計算され、記載された請求書が必要となりました。特に、振込手数料に関しても消費税が適用されるため、金融機関が発行する適格請求書の保存が必要となり、これは振込手数料にかかる消費税額も、課税事業者が仕入税額控除の対象とするためのものとなります。

買い手側負担は変わらず?


通常、振込手数料は送金を行う側、つまり購入者(買い手)が支払うことが一般的な取り決めとされています。そのため、企業が販売者(売り手)として商品やサービスの代金を請求する際には、特別な合意がない限り、購入者側が振込時の手数料を負担することが一般的となっております。インボイス制度の導入後も、この基本的な原則に変更はなく、送金にかかる手数料の負担に関しては、従来通りのやり取りがされることになります。ただし、取引の条件や契約によっては、売り手が手数料を負担することもあるため、各取引ごとに明確な合意を形成し、誤解やトラブルを防ぐためにも、振込手数料の負担に関する取り決めをしておくことも重要かもしれません。
つまり、振込手数料の取り扱いについては、インボイス制度下でも、取引の公平性と透明性を確保するために、事業者間の合意に基づいて適切に管理される必要があります。

売り手側負担の場合は?


振込手数料の取り扱いに関して、基本的には購入者(買い手)の責任であるものの、実務上、売り手側がこれを負担するケースも珍しくありません。契約や取り決めにおいて振込手数料を売り手が負担する旨の内容が記載されている場合は、請求額から振込手数料を引いた金額が売り手の口座に振り込まれます。売り手が振込手数料を負担する際の会計処理方法には、主に二つのアプローチがあります。一つ目は、売上金額から振込手数料を直接値引きする方法で、二つ目は、買い手が手数料を一時的に立て替えたものとみなし、後日清算する方法です。どちらの方法を選択するかによって、適格請求書の保存方法や税務上の取り扱いが異なるため、慎重に選択し、適切な会計処理を行うことが求められます。

3万円未満の支払いの場合のインボイス対応は?


まず初めに、2023年10月1日から2029年9月30日までの間は、前々事業年度の課税売上高が1億円以下か前年上半期の課税売上高が5千万円以下の事業者に関しては、少額特例法が定められており、これにより税込1万円未満の課税取引については適格請求書の保存が不要となっております。
インボイス制度の導入前は、税込み3万円未満の取引では、特定の事項の記載がある帳簿を保存することで仕入税額控除の対象となっていましたが、インボイス制度のスタートと共に、少額特例に該当しない場合、振込手数料のようなわずかな金額であっても、金融機関から発行された適格請求書の保存が仕入税額控除を受けるための必須条件となりました。特に、ATMを通じての振込では適格請求書の保存は不要ですが、窓口やインターネットバンキングでの振込手数料については、適格請求書の要件を満たす必要があります。

■まとめ


今回は請求書の振込手数料をどちらが負担するべきかについて解説いたしました。
振込手数料は基本的に債務者が負担するものですが、念のため但し書きを記載しておいた方がよいでしょう。

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執筆者 S.K

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