2026/10/25
企業と人をつなぐ

繁忙期だけ、毎年戻ってくる人たち

繁忙期だけ、毎年戻ってくる人たち

繁忙期のたびに、一から人を探している

年末年始、夏休み、スキーシーズン、引っ越しの3月。どの仕事にも、人が一気に足りなくなる時期がある。

そのたびに、会社は求人を出す。応募を待って、面接をして、採用して、仕事を一から教える。やっと慣れてきたころに、繁忙期が終わる。そして翌年、また同じことを繰り返す。考えてみると、ずいぶんもったいないことをしている気がする。

でも、毎年戻ってくる人がいる

一方で、どの職場にも「いつもの人」がいたりする。

年末になると、毎年同じ郵便局で年賀状の仕分けをする人。冬になると、同じスキー場のリフトに戻ってくる人。夏休みだけ、同じ海の家やリゾートホテルで働く人。お店の側も「今年も来てくれたんだ」と顔を見てほっとする。

そういう人には、仕事を一から説明しなくていい。どこに何があるか、忙しい時間帯はいつか、誰に聞けばいいか、もうわかっている。初日から戦力になる。

昔からあった、季節ごとにつながり直す働き方

実はこれは、昔からあった働き方でもある。

日本酒の蔵には、冬になると同じ蔵に戻ってきて、春まで泊まり込みで酒を造る「蔵人」がいた。雪国の農家が、田んぼの仕事がない冬のあいだに蔵で働く。それを何年も、何十年も続ける。蔵にとっても、毎年戻ってきてくれる人たちがいるから、毎年同じ酒が造れた。

その蔵人は、いまはずいぶん少なくなった。日本酒造杜氏組合連合会の集計では、組合に所属する酒造りの働き手は、1965年の約2万8,000人から、2023年には約2,000人まで減っている。暮らしが変わって、半年も家を空ける働き方が難しくなった。いまは社員が一年を通して酒を造る蔵も増えている。

働き方の形は変わった。でも、「季節がめぐるたびに、同じ人とつながり直す」という考え方そのものは、いまの繁忙期の採用にこそ必要なんじゃないかと思う。

雇用は途切れても、つながりは途切れない

季節の仕事は、契約が季節で終わる。繁忙期が過ぎれば、雇用はいったん途切れる。

でも、つながりまで途切れる必要はない。「来年もお願いします」と言える関係を、ちゃんと残しておけばいい。その人の連絡先、去年どの持ち場で働いて、どんなことが得意だったか。そういうことを会社がきちんと持っておけば、次の繁忙期の前に、まずその人たちに声をかけられる。

ところが実際には、繁忙期が終わった瞬間に、その情報はどこかに消えてしまうことが多い。担当者が替われば、なおさらだ。毎年来てくれていた人が、ある年から来なくなっても、誰も気づかない。

私たちの視点

私たちは、会社のタレントプールを、いま働いている人(現在)、かつて働いていた人(過去)、これから働くかもしれない人(未来)の三つで考えている。季節の仕事は、この「過去」が毎年また「現在」に戻ってくる、いちばんわかりやすい形だと思う。

一度働いてくれた人とのつながりを、会社の財産として残しておく。繁忙期が来たら、求人を出す前に、まず去年の人たちに声をかける。そういう当たり前のことが、当たり前にできるようにしたい。

「来年もお願いします」と、言っておく

繁忙期の人手不足は、たぶんこれからも毎年やってくる。

だったら、今年の繁忙期が終わるときに、まず一言、「来年もお願いします」と言っておく。そして、そのつながりを切らさずに持っておく。一から人を探すより、ずっと早くて、ずっと確かだと思う。

出典:日本酒造杜氏組合連合会の集計(日本食糧新聞報道)=所属する杜氏・三役・一般の酒造従事者1965年2万8,075人→2023年2,024人(約92%減)/国税庁報告書=酒造の製造現場は杜氏を中心とした季節従業員と常用従業員で構成する企業が多い。

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