
「まず社内を見る」が、数字で裏づけられてきた
タレントプールという言葉を、最近よく聞くようになった。ざっくり言えば、企業が「この人とはつながっておきたい」と思う人たちを、ためておく場所のことだ。
海外では、この考え方が採用の順番そのものを変えつつあるらしい。Gartnerは、採用にかかる工数のおよそ3分の1が、外部からの採用ではなく社内のタレント活用へ移っていくと見ている。社内タレントマーケットプレイス(社内の人材を可視化して配置しなおす仕組み)の米国での利用率も、2024年の25%から2025年には35%へ上がったという。スキルで人を見て採る「スキルベース採用」は、雇用主の85%がすでに取り入れているそうだ。
要するに、「外に募集を出す前に、まず自社の中を見てみよう」。そういう動きが2026年にはだいぶ当たり前になってきた、ということだと思う。採用コストは上がり続けているし、外の母集団もそう都合よくは集まらない。だったら手元にいる人、すでに縁のある人から見ていくほうが理にかなっている。
ここで一つ、引っかかっていることがある
こう書くと、タレントプールというのは決まった箱のように聞こえる。実際、世間の使われ方を見ていると、入れる相手はだいたい決まっているように見える。自社が採用した人。いま採ろうとしている人。あるいは採用活動の中で接点を持った人——つまり、採用費をかけたからこそつながれた人たち。この範囲に収まっているケースが多い。
でも、本当にそれだけだろうか。私たちはそこが引っかかっている。
まだ一度も接点のない、潜在的な人たち。その人たちだって、タレントプールに入っていていいはずだ。「こうでなければいけない」という定義が、どこかに決まっているわけではない。誰かが正解を配っているわけでもない。だとしたら、そこにこそ目を向ける価値があると思っている。
だから私たちは、既存の定義を変えるとか変えないとか、そういう話をしているのではない。そもそもこれまでとは違う捉え方で、タレントプールというものの定義そのものを、今つくっているところだ。まだ途中だし、きれいに言い切れるほど固まってもいない。ただ、この定義を自分たちの手でつくっていきたい、という気持ちははっきりある。
「貯められる」なら、何を貯めるかが問われる
タレントバンクは、採用を「使い捨て」ではなく「貯まっていくもの」として設計している。一度会った人、応募してくれた人、辞めていった人、まだ会っていないけれど関心を持ってくれている人。そういう縁を、その都度リセットせずに自社のプールとして持っておける。保有や蓄積そのものにはお金がかからず、実際に使った分だけ課金する、という料金の形にしているのも、プールを気軽に持ち続けてほしいからだ。
そして、プールが「貯めておける資産」だと考えるなら、次に問われるのは中身のほうだ。何を、誰を、そこに入れておくのか。ここで最初の話に戻る。採用費をかけて接点を持った人だけがプールの住人、という前提を外してみる。すると、未来のどこかで働きたいと思ってくれるかもしれない人まで、視界に入ってくる。
採用を資産として持つと何が変わるのか。たぶん、いちばん大きいのは、企業が「まだ会っていない人との関係」まで自分ごととして持てるようになることだと思う。仲介に預けて、必要なときだけ引き出す関係ではなく、自分の手元で育てていける関係。その器としてのタレントプールを、私たちはもう少し広い意味で捉え直していきたい。定義は、これからつくる。