2023/11/21
給与

賃金支払の五原則とは?デジタル給与導入による変化を解説

給与の支払いについて、50年ほど前は現金を直接渡すことが当たり前でしたが、現在では企業が銀行に振り込むことで受け取っている人が大多数だと思います。
さらにこの流れに変化が生まれようとしています。それが給与のデジタル払いです。
なぜ給与の支払い方法が長い間変わることがなかったのでしょうか、そこには給与の支払方法を定める賃金支払の五原則による決まりにも原因がありました。
既存のルールに変化が加わることで何が起きるのかも紹介していきます。
現金で直接受け取っていた給与がスムーズに銀行振り込みに変わったように、今度はデジタル払いへの移行も予想されますが、この記事内容を把握することで、抵抗なく新たな流れに順応していけるかもしれません。

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デジタル給与(給与デジタル払い)とは

デジタル給与を理解する上でまず理解したいのは、デジタルマネーとはどのようなものかということです。
デジタルマネーとはスマートフォンなどの電子デバイス上で存在するお金を意味しており、例えばPayPayなどの電子マネーなどを指します。
この電子マネーを用いて給与を支払うのがデジタル給与払いになります。
つまり、スマートフォンやコンピュータを使って電子的な方法で給与を受け取ることを可能にすることで、お金の管理をより簡単で迅速なものにしようというものです。
多くの国でデジタル給与払いへの移行の流れが活発となっており、現代の労働者にとって便利な給与の受取方法のひとつになりつつあります。
現在の日本の現状としては、2023年4月にデジタル給与払いが解禁されておりますが、企業がデジタル給与払いを行う手段となる、電子マネーなどの運営を行う資金移動業者の審査が厚生労働省により行われているので、審査が完了した後にはじめて企業から従業員への支払いが可能になります。
またデジタル払いとは電子マネーや仮想通貨を指しておりますが、仮想通貨は現金と交換できないなどの理由から、現在は給与の受取方法としては省かれております。

賃金支払の五原則とは

給与の受取手段として、現金で直接受け取っていたことから、銀行振り込みへと変化し、デジタルマネーでの受取へと次のステップへと移り変わろうとしておりますが、これまでの変遷を含めて、これから普及していくであろうデジタルマネーでの給与受取を理解するには、そもそも企業が賃金を支払う際にはどのような決まりを守っているかを理解する必要があります。
そこで賃金支払の五原則をわかりやすく紹介します。

賃金支払の五原則とは、

・通貨で、

・直接労働者に

・全額を

・毎月1回以上

・一定の期日を定めて支払わなければならない

ということを定めたものになります。
通貨払の原則は、貨幣経済の支配する社会において最も有利な交換手段である通貨による賃金支払を義務付け、これによって、価格が不明瞭で換価にも不便であり、弊害を招くおそれが多い実物給与を禁じております。

また、直接払の原則は、中間搾取を排除し、労務の提供をなした労働者本人の手に賃金全額を帰属させるため、労働者本人以外の者に賃金を支払うことを禁止するものとなっており、ただし、使者に対して賃金を支払うことは差し支えないものとされています。
使者であるか否かを区別することは実際上困難な場合もありますが、社会通念上、本人に支払うのと同一の効果を生ずるような者であるか否かによって判断することとなります。

賃金支払の五原則の例外とは

賃金支払の五原則は給与の支払い方を定めたものですが、この定められた規定にも例外はあります。
現金を直接手渡しをしていた時代から銀行振り込みに変わったタイミングなどが例外が適用されたシーンに当てはまる場面があると考えられますが、これからの給与のデジタル払いの導入においても、どのように例外が適用され、なぜ必要なのかが、この記事により理解につながります。

通貨払いの原則の例外

通貨払いの原則に従えば、日本円の現金で賃金を支払うことが必要です。
ただし、労使協定や厚生労働省の規制に基づいた例外も存在しており、具体的には、口座振込や退職金の小切手による支払いが許容されています。
口座振込については、本人の同意があれば問題ありませんが、通勤手当を現物支給する場合には、労使協定の締結が必要で、外国人労働者には外貨での支払いが認められていないことにも留意しましょう。

直接払いの原則の例外

直接払いの原則は、通常、労働者に賃金を直接支払うことを要求しますが、特定の例外が認められています。
たとえば、労働者が入院などで賃金を受け取れない場合、労働者の妻が代理で賃金を受け取り、それを労働者に渡すことによって、直接払いの要件を満たすことができます。
さらに、賃金が裁判所の決定によって差し押さえられている場合には、賃金を直接差押債権者に支払うことも認められています。
ただし、この場合でも裁判所の決定が前提であり、本人以外に支払うことは裁判所の許可が必要です。

毎月1回以上払いの原則の例外

毎月1回以上の支払いの原則にも例外が存在し、それは臨時に支払われる賃金に適用されており、臨時に支給される賃金には、ボーナス、見舞金、結婚手当、退職金などが含まれ、このような臨時賃金は、支給条件は明確であるものの、支給時期が定期的ではなく、突発的に支給されることが特徴です。
さらに、厚生労働省の規定に従って企業が設定する皆勤手当や禁煙手当など、これに準ずる賃金も同様に例外として認められていますが、これらの賃金の有無は企業によって異なることに留意してください。

一定期日払いの原則の例外

一定期日払いの原則に従えば、毎月特定の期日に賃金を支払うことが求められます。
ただし、毎月末日や支払日が営業日でない場合には、当該月の別の日に支払うことが許可されており、毎月末日は月毎に日付が変わりますが、法的には一定期日として認められています。
また、休日を理由にして期日以外の日に賃金を支払うことも認められていますが、末日が休日であるからといって賃金の支払いを次の月に繰り延べることはできません。
これにより賃金の支払いが翌月にずれ込む場合、毎月1回以上払いの原則に反することとなります。

デジタル給与導入によるとどういった変化が起きるか

これまで、給与を銀行振り込みにするための障壁に対して、賃金支払の原則に例外が適用されてきましたが、デジタル給与の支払いを可能にするためにもハードルは存在していました。
それは、資金移動業者が従業員の口座へ振り込みを行うことであり、たとえ従業員の同意を得られた場合であっても、振込が認められませんでした
そこで2023年4月の労働基準法施行規則の改正により、厚生労働大臣が指定する資金移動業者からの口座への振り込みであるならば、振込を可能と定めることとなりました
これにより、これまでの現金で支払うことの例外として、銀行口座や証券口座への振込を可能にしたことに加えて、資金移動業者によりPayPayなどの電子マネーによる給与の受取が可能となりました。

エニペイとは、毎月指定日に、デジタルマネーを含む指定した受け取り方法で給与を最大5口座に振り分けることのできるサービスです。
「企業と、従業員と、従業員の給与債権の登録ができて、一定の日付・方法で給与(又は賃金)の全部又は一部を繰り返し支払い、その結果を保持しておくことができるシステム」として当社がビジネスモデルの特許を取得しております。【特許第6928708号】

まとめ

私たちが給料をもらうのには賃金支払の五原則に基づいていましたが、その時代によって何が求められているかが考慮され、新たな受取方法が認められてきました。
そんななかで電子マネーが広く普及したことにより、今回のデジタルマネーによる給与の受取が可能となるように政策が動くこととなりました。
しかし、現状として、デジタル給与の支払いは認められましたが、資金移動業者の審査がいまだ済んでおらず、実際の運用の開始はもう少し時間がかかりそうです。

執筆者 B.M

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