本メディアは、大学生によるインタビューを通じて企業の採用戦略や従業員の働き方を発信することを目的としています。これから社会に出る学生の目線で働きがいのある職場について紹介します。

第13回は、青果卸・加工のトップランナーであるデリカフーズホールディングス株式会社。同社グループの採用方針や若手の積極的な登用、新しいことにチャレンジしやすい風土づくりについてうかがいました。

デリカフーズグループの採用戦略

取材協力：デリカフーズ株式会社東京事業所人事課係長　佐々木優さん（写真左）：デリカフーズホールディングス株式会社　広報IR室長　桑原未季さん（写真左）

デリカフーズホールディングス概要

1979年、名古屋市で創業。青果物の専門商社デリカフーズ㈱を中心に、野菜の仕入れから加工・物流までワンストップで手掛ける。新鮮な野菜を全国の飲食店や小売店に届けられるネットワークが特徴で、業界唯一の東京証券取引所上場企業。2021年にはEC事業にも参入した。

ーーはじめまして。中央大理工学部4年生の佐々木と申します。本日はよろしくお願いします。最初に青果卸業界最大手のデリカフーズグループの特徴を教えてください。

当社は「Fresh & Speedy」をキャッチフレーズに掲げている通り、契約農家から仕入れた野菜を鮮度の高いまま加工しお客様に提供できるのが強みです。全国19ヵ所に拠点があり、24時間365日体制で新鮮な野菜やカット商品をお届けしています。

野菜の鮮度保持には温度が大切です。野菜は一度カットすると熱を持ち品質劣化が始まる性質を持っています。劣化を防ぐには５℃程度の低温度帯を維持する必要があります。当社では加工時も運搬時もこうした環境を維持する設備を備えており、顧客の理想にマッチする商品提供にこだわっています。

グループ全体では研究開発やドレッシング・タレの製品化なども手掛けているほか、トラック約100台以上で対応する物流会社も抱えています。新型コロナウイルス禍では主要顧客である飲食店の休業が相次いだこともあり、家庭に直接届けられるネット販売（EC）事業も始めました。全工程を通じて衛生管理には特に力を入れており、工場では国際認証規格も取得し食の安心安全を徹底しています。

ーー来年から就職活動が始まるので、企業がどのようにして採用を進めているのかが気になります。

柔軟な採用形態が当社の特徴です。子会社のデリカフーズが新卒採用を一手に担い、毎年総合職として50人程度が入社します。全国の主要都市に事業所があり、採用の可否はエリア担当ごとに判断しています。

挑戦を重んじる風土

ーー面接ではどのような点を見られているか知りたいです。

「食」に興味があることに加え、チャレンジ精神や行動力について注目しています。面接では候補者が所属コミュニティーのために行動できる人物なのかを特に意識しています。学生時代のアルバイトや部活動において、自ら何かを提案したことはあるか、どのように後輩を指導していたかといった観点で質問しています。

当社には自分たちでできることは自分たちでやる、という挑戦の風土があります。できない理由よりできるための方法を考えられる人材を大切にしています。自分なりの気づきから新しい取り組みを提案できるような方にきていただけるとうれしいですね。社内の例では、コロナ禍で立ち上げたECサイトは、社員たちが創意工夫しデザイン企画やサイト運営を内製化しました。

ーー新卒以外の採用についても知りたいです。

近年では新卒と同程度をキャリア採用（中途採用）しており、即戦力となる方々にも多く入社していただいています。キャリア向けの入社式や懇親会を開き、社員同士がスムーズに交流できるよう工夫しています。数名ではありますが、一度当社を離れてから戻ってきた社員もいます。

慣習にしばられない採用方針

ーー辞めても再入社で受け入れてもらえるのですね。

実はグループトップの社長の大﨑（善保氏）自身、当社のアルバイトからキャリアをスタートさせた少し変わった経歴を持っています。もともと20代のときに自身でアパレル会社を経営していたのですが、創業者の舘本（勲武氏、現同社会長）に出会った際、将来のことや自分の志について話をしているうちに、舘本の会社で学びたいと自分の会社をたたんでアルバイトを始めたそうです。

良いと思った人材に対しては、規則や決まりに縛られることなく柔軟に採用する。これは創業者から引き継がれている当社のよき伝統なのかもしれません。

ーー入社後にはどのようなキャリアが積めますか。新卒で希望のポジションに配属されることもあるのでしょうか。
新入社員の多くは始めに生産管理・出荷管理の部門に配属となります。面接時にバイヤーになりたいと伝えてくれる学生も多いのですが、会社としてどんな野菜を扱っていて、どういった工程で加工され、お客様に届けられているか、という当社事業の基盤となる仕事を経験して頂き、その後に様々な部署で活躍して欲しいと考えています。

年1回の異動希望アンケートや上司との面談も設けているので、やりたいことや将来設計について思いを伝えられる機会もあります。

20代でも管理職になれる飛び級制度

ーー若手で活躍している人はいますか。

やはりチャレンジ精神のある若手が活躍する傾向があり、20代で管理職になる例もあります。入社４、５年目で副工場長やセンター長を担っている若手社員もいます。

ーーかなり早い時期から管理職につけるのですね。これから就職活動するうえで、興味がひかれる制度です。

数年前に飛び級の昇進制度を設けたのですが、当時の若手社員の想いがきっかけとなりました。現在、工場長を務めている若手社員がいますが、その社員が「頑張っている若手を評価する制度を作ってほしい」と社長に直訴したことが始まりです。

飛び級制度が取り入れられ若手社員がより活躍しやすい職場になりつつあります。こうした声が通る風通しのよさも当社の特徴かもしれません。実際、東京本社では同じフロアで若手も社長を含む役員も働いています。職位の上下に関わらずフランクに話ができる雰囲気があります。

ーー学生のインターンシップもあるのでしょうか。

毎年１～３日間のインターンシップを複数日開催しています。当社はB to B事業がメインなので、業界最大手ではありますが、会社名を知らない学生も少なくありません。まずはデリカフーズを知ってほしい、というねらいで、企業説明や業務体験を中心に短期間で実施しています。

ーー参加学生にはどんなことを求めていますか。

積極的で、学びの意欲が高い学生に来ていただけるとうれしいですね。せっかくきても恥ずかしがって自分の意見を言えないという学生もいます。挑戦の企業風土であるからこそ、意見が受け入れられやすいので、もったいないと感じてしまいます。短い期間でも周りの参加学生や社員と意見交換し、会社の様々なものを見て感じて体験してもらいたいです。

ーー人手が多くいる生産現場や人材確保が難しいときには、新卒とは違った採用形態があるのでしょうか。

主にカット野菜工場や出荷センターなどにおいて、パートやアルバイトの方にも働いていただいています。工場内においてもコミュニケーションを重視しており、採用時にも「コミュ力」を見ています。パート・アルバイトから社員になった方も複数います。

外国人労働者を積極的に受け入れたり、繁忙期にはスポットバイトを利用したりもしています。当社の事業はお客様である外食企業の繁忙期の影響を受けるため、季節によって必要な人員が左右されます。

業界のトップランナーとして農業をけん引

ーー様々な採用方法を設けたり、若手を活躍できる制度を取り入れていたりするのはなぜでしょうか。

「食」や「農業」にかかわる人たちを育てていきたいという強い思いがあります。農業就労者の減少や食料自給率の低下は日本にとって深刻な問題です。天候不良も加わり、安定した農業が難しくなってきています。日本の食をこれからも維持していくことができるのか、という問題に大きな危機感を持っています。

私たちには野菜を通じて社会に貢献したい、という想いがあります。青果物流通事業で唯一の上場企業として、業界を引っ張っていきたい。農業や青果物流通現場での働きがいを伝え、食にかかわる人材を増やしていくことは使命だと考えています。人がいないことには事業そのものが成り立ちません。こうした背景からコロナ禍で需要が落ち込んだ時でも採用を続けました。10年後を見据え、持続可能な農業を実現することが当社の目標です。

ーー貴重なお話ありがとうございました。最後に御社が目指す会社像を教えていただきたいです。

野菜の加工、卸売りにとどまらず、野菜であればデリカフーズに任せてみよう、と思われる総合野菜メーカーとしてのポジションを目指しています。社員のやりがいと幸福にも貢献していきたいと考えています。

農業や業界が若い人たちに選ばれるようにするために当社はモチベーションを高められる会社である必要があります。多くの人を巻き込んで新しい取り組みに挑戦していくことで、野菜の価値を高め農業分野や業界を盛り上げたい方々の入社を待っています。

デリカフーズホールディングスHP
https://www.delica.co.jp/

デリカフーズグループ採用サイト
 https://www.delica.co.jp/recruit/

学生インタビュアーの感想

佐々木巌（ささき・げん）

今回の取材は、今まで自分が抱えていた大手企業へのイメージがガラッと変わる新鮮な体験でした。特に、調達から加工、販売まで一括して行う専門商社だからこそ、自立した挑戦には若手・ベテラン関係なくチャンスが訪れる風通しのよさがあるというお話が、印象に残っています。会社の方とお会いし、実際の雰囲気を感じながら企業の生の声を聞くことができ、大変勉強になりました。自分のキャリアを考える上でこの経験を大切にしていきたいです。