
地方の中小企業は、「雇えない」
地方の中小企業と話していると、決まって出てくる言葉がある。「人が来ない」。日本商工会議所の調査でも、中小企業の65.6%が「人手が足りない」と答えている(2024年)。建設や運輸、介護では8割近い。
募集を出しても、応募がない。若い人は都市に出ていく。ようやく採れても、続かない。地方の中小企業にとって、「正社員をひとり雇う」ことのハードルは、都市の会社よりずっと高い。
でも、地域とつながっている人は、すでにいる
一方で、こんな数字もある。国土交通省の推計では、住んでいる場所とは別の特定の地域に、定期的に通ったり関わったりしている「関係人口」が、全国でおよそ1,800万人いる。18歳以上の2割近くだ。三大都市圏から地方に通う人だけで、約450万人。
移住まではしない。でも、その町が好きで、何度も通っている。実家がある、友人がいる、昔住んでいた。そういう「ゆるいつながり」を持った人は、思っている以上に多い。
雇わなくても、力を借りられる時代
ここに、働き方の変化が重なってきた。副業、兼業、二拠点居住。都市の会社に勤めながら、週に何時間か地方の会社の仕事を手伝う。リモートで経営や営業、デジタルの相談に乗る。月に何日か、現地に滞在する。
国も、この流れを後押ししている。内閣府の「プロフェッショナル人材事業」は、45道府県の拠点で地域企業と専門人材をつないでいて、累計のマッチングは約3万9,000件にのぼる。対象には、正社員だけでなく副業・兼業も入っている。2024年11月には、二地域居住を促す法律も施行された。地方側の狙いのひとつに、はっきり「人手不足の解消」が挙げられている。
正社員として、まるごと一人を雇う。それが難しくても、「この部分だけ」「この時期だけ」なら、都市の人材と組める。雇う前に、まずつながる。地方の中小企業にとって、ここが新しい入口になりつつある。
つながりは、地域企業の「プール」になる
大事なのは、そのつながりが、一度きりで終わらないことだと思う。副業で関わってくれた人、イベントに来てくれた人、その町に通い続けている人。たとえ今すぐ一緒に働かなくても、「この会社を知っている人」「この地域が好きな人」として、関係は残る。
人手が本当に必要になったとき、まったくの他人に募集をかけるのか。それとも、すでにつながっている人に声をかけるのか。後者のほうが、ずっと早いし、ずっと確かだ。地方の中小企業こそ、こういう「つながりのプール」を持つ意味が大きいんじゃないか。
私たちの視点
私たちは、世界中の企業が、自社のタレントプールを持てる世界をつくりたいと思っている。それは大企業だけの話ではない。むしろ、採用にお金をかけられない地方の中小企業ほど、「雇う前につながっておく」仕組みが効く。働いたことがある人、関わったことがある人、ファンになってくれた人。その町の会社と、人とのつながりを、切らさずに持っておけるようにしたい。
まず、つながっておく
地方の人手不足は、たぶんこれからもっと深刻になる。正社員の募集だけで乗り切るのは、正直、難しい。
でも、地域とつながりたい人は、都市にたくさんいる。雇えなくても、つながることはできる。まずつながっておけば、いざというとき、声をかけられる人がいる。地方の中小企業の未来は、その「つながりの厚み」で決まっていくのかもしれない。