2026/11/07
企業と人をつなぐ

ふるさとには、お金は送れても、力は送れない

ふるさとには、お金は送れても、力は送れない

1,151万人が、住んでいない町にお金を送っている

ふるさと納税が、また過去最高を更新した。総務省によると、2025年度に寄付された額は1兆3,314億円。件数は約5,960万件。ふるさと納税で住民税が軽くなった人は1,151万人いる。

もちろん、お米やお肉といった返礼品が目当ての人も多い。それでも、生まれ育った町や、旅行で好きになった町を選んで寄付している人も、少なくないと思う。毎年1,000万人以上が、自分の住んでいない町を応援している。考えてみると、すごいことだ。

でも、つながりは「お金」で止まっている

ただ、そのつながりは、ほとんどの場合お金と返礼品で止まっている。

寄付をした町に、どんな会社があるのか。その会社がどんな人を必要としているのか。そういうことを知る機会は、まずない。町の側も、毎年寄付してくれる人が、どんな仕事をしていて、どんな力を持っているのかを知らない。せっかく町を気にかけてくれている人がいるのに、そこから先に進まない。

地元は好き。でも、戻れない

地元を離れた人の気持ちを聞いた調査もある。

東京に住む北海道・東北出身の大学生に聞いたある調査では、94.3%が「地元が好き」と答えた。それなのに、「地元で就職したい」と答えたのは11.4%だけだった。地元以外で就職する理由のトップは、「地元に就職先の選択肢が少ないから」。小さな調査なので数字はそのまま受け取れないけれど、地元が好きなのに戻れない、という気持ちはよくわかる。

東京圏に住む地方出身の社会人に聞いた別の調査でも、地方への転居を考えている人は約2割、「可能性はある」まで含めると約7割にのぼった。

地元を好きでいる人も、いつか戻りたい人も、たくさんいる。ただ、地元の会社との接点がないまま、時間が過ぎていく。

戻らなくても、つながれる

前回、地域でタレントプールを共有するという話を書いた。その「町の外」側にいるのが、地元を離れた人たちだと思う。

地元の会社にとって、出身者は特別な存在だ。町の地理も、言葉も、人の気質も、最初からわかっている。いまは東京で働いていても、帰省したときに繁忙期の手伝いをすることはできる。リモートで、ホームページや通販の仕事を手伝うこともできる。そして、いつか本当に戻ろうと思ったとき、すでに地元の会社とつながっていれば、「戻る先」がある。

戻るか、戻らないか、の二択ではなく、離れたままつながっておく。その間に、いろいろな関わり方があっていい。

私たちの視点

ふるさと納税で、人は住んでいない町にお金を送れるようになった。私たちは、これと同じことを仕事でもやりたいと思っている。言ってみれば、「ふるさと納税の仕事版」だ。

たとえば、地方の自治体ごとにタレントバンクをつくる。その町の出身者はもちろん、これまでその町とまったく関係のなかった東京や大阪の人たちも、その町に興味を持ったら登録できる。そして、町の会社から「この仕事、手伝ってもらえませんか」と声がかかり、遠くからでも、ときどき現地に通いながらでも、その町の仕事をする。

ふるさと納税で返礼品を選ぶように、関わりたい町を選んで、仕事でつながる。地域にとっては、ファンをつくることでもある。お金だけでなく、力を貸してくれるファンが、町の外にたくさんいる。そういう仕組みがあっていいと思う。

これからは、自治体や地域の方々にも、この考え方を働きかけていきたいと思っている。どこに、どう声をかければ形にしていけるのか。もし知っている方がいたら、ぜひ教えてほしい。

お金だけでなく、力でも

毎年1,000万人以上が、ふるさとにお金を送っている。その気持ちの何分の一かでも、仕事のつながりに変わったら、地方の人手不足は、少し違って見えてくるかもしれない。

ふるさとには、お金だけでなく、力も送れる。離れていても、地元の会社とつながっておく。そういう時代に、もう入りつつあるんじゃないかと思う。

出典:総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果」(2026年7月31日公表、2025年度)=受入額1兆3,314億円(6年連続過去最高)、受入件数約5,963万件、住民税控除適用者1,151万人/地元帰り隊(学生団体)調査=東京在住の北海道・東北出身大学生、「地元が好き」94.3%、「地元で就職したい」11.4%、地元外就職の理由「就職先の選択肢が少ない」58.1%(小規模の任意調査)/三菱UFJリサーチ&コンサルティング「東京圏に居住する地方出身者の地方への移住意向」(2017年)=地方への転居を考えている約2割、可能性を含め約7割。

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