冒頭挨拶
池田吉来(以下、池田):株式会社Payment Technology(以下、Payment Technology)がお送りするスタートアップ応援ラジオ番組「IPOは通過点」パーソナリティの池田吉来です。
上野亨(以下、上野):Payment Technology代表の上野亨です。
池田:今日も素敵なゲストがいらっしゃっていますのでご紹介いたします。株式会社シャコウ(以下、シャコウ)代表取締役の太田翔葵さんです。よろしくお願いいたします。
太田翔葵(以下、太田):よろしくお願いします。
池田:太田さん緊張してますか?
太田:思ったよりも本格的に緊張してます。
池田:私も最初は本当に汗ダラダラになるくらい緊張しました。
上野:皆そう言いますよ、この環境は。でも、最後の頃にはもうベラベラ喋りますので安心して進めましょう。
池田:では、早速シャコウさんの事業や太田さんのご経歴の紹介をお願いしてもいいですか?
太田:改めまして株式会社シャコウの太田と申します。シャコウの事業はBPaaSという領域のポジションを取っております。BPaaSという言葉はあまり聞き慣れないと思いますが、私はBtoB3.0という形だと思っておりまして、1.0がBPOの時代、2.0がSaaS、BtoB3.0でBPO足すSaaSという形で、SaaSが難しくて使いこなせない企業はSaaSごと外注したほうがいいという考え方です。アメリカはこの市場が今非常に伸びていますが、日本ではちょうど去年ぐらいから出始めたので、弊社としては特にBtoBのマーケティングとセールスの領域において色々な会社さんを支援させていただいています。
池田:ありがとうございます。早速BPaaSからお聞ききしたいのですが、その前に太田さんのご経歴がとても面白いので、19歳でフリーランスでご活躍されてからシャコウさんを創業するまでのことをお聞きしてもよろしいですか?
19歳でフリーランスを経験後に起業
太田:はい。私は出身が大阪で高校は進学校でしたが、京大に落ちて東京の私立大学に入学する時にもう学歴で生きるのを止めようと思いました。大学もほぼ行かなくなって、社会に出るためにインターンの求人を色々と見て偶然採用してくれた会社が、創業1ヶ月目で社長1人しかいないドベンチャーな会社でした。当時キュレーションメディアのようなものがすごく流行っていた時代だったので、ディレクターのような役割で入社しましたが、入社2ヶ月目くらいに3ヶ月後のキャッシュフローが危ういという状況を経験しました。その後に買収された会社で、2年くらい事業責任者を担当させてもらいました。その会社の経営者が非常に大胆で当時20歳の私に予算1億円くらいで事業を任せてくれましたので、2年間はBtoBtoCのメディア事業の責任者をしました。簡単に言うとお墓の売買サポート事業で、おじいちゃんやおばあちゃんの終活で自分たちのお墓を探したいというニーズがあり、インターネットで調べたサイトに資料請求したいというニーズを満たすために、全国の石材店とマッチングする資料請求モデルのビジネスを手掛けました。石材店はとてもレガシーな業界なので訪問が当たり前で、電話でITの話をすると嫌な顔をされて怒られました。
池田:キュレーションやスタートアップ、ベンチャーの人、ビジネスマンが必ず当たる壁ですね。
太田:当時のコアメンバーは私とディレクター、マーケットエンジニア、デザイナーなどの営業だけで、CSチームがなかったにもかかわらず、おじいちゃんやおばあちゃんはネットよりも電話を使うこともあり、24時間電話の対応をしていました。お年寄りは朝が早いので、6時くらいの電話にも出るという経験をして、会社を卒業してからは1年くらいのフリーランスを経て会社設立に辿り着いたという流れです。
池田:では、シャコウさんを創業する時にはある程度BPaaSの領域が行けると思ってたんですか?
太田:全然そんなことはなくて、BPaaSの概念を知ってまだ1年も経っていません。会社を作った時は、フリーランスで手掛けたSEO広告や制作などのデジタルマーケティングを幅広く扱う総合代理店のような事業でしたが、1期目は二次商流の案件が多かったので契約次第では仕事がなくなるし、委託元としては自分たちで手掛けることで粗利を改善できるので、会社としてどのポジションを取るべきかを考えました。コロナとも相関がありますが、山ほどあるデジマの総合代理店よりはBtoBのマーケティングやセールスの領域は変化が大きく、業界によってはリアルの展示会での名刺交換が一気にデジタル化してZoomが当たり前の世界になり、マーケティングもデジタルでいかにリードを取れるかという勝負になりました。もちろんBtoBの代理店はありますが、特化している会社がなかったためポジションを取ることができるんじゃないかと思い、この2年でBtoBに寄せて、BPO事業者からBPaaSという文脈に乗っている形です。
BPaaSにおける優位性
池田:BPaaSやBtoB3.0というお話がありましたが、BPaaSをアウトソースのサブスクと見るのが一般的な人たちの理解ではないかと思いますが、今までの概念とどのように違いますか?
太田:それ程大きく変わるわけではありませんが、SalesforceやMAツール、SEOなどの色々なSaaSのツールを活用できる日本の企業は既に大きなメリットを享受していると思いますが、97%を占める中小企業は活用し切れずに、メリットを享受している企業とそうでない企業がきれいに分かれている状態だと思います。だからこそ、シャコウのようなBPaaS企業はツールを駆使してSalesforceのザ・モデルを作ることができるので、ビジネスプロセスごと外注できるというメリットがあります。一番特徴的なところはイノベーター理論のキャズムの溝を超えることができる点で、日本の中小企業の全体的な底上げに繋がると思っています。抽象度が高い話になりましたね。
池田:使いこなせなかった人たちが使えるようになる未来が来ると、市場もこの先ぐっと広がっていきますよね?市場が広がる時に面取りやポジションを取り切ってナンバーワンになるという点では、かなり重要度が高いと思いますがライバルの情勢などを踏まえて今後の展開はどのように考えられていますか?
太田:戦略としてはバリューチェーンを広げることを重要視していて、BPaaSに限らず国内のBtoBの支援会社がマーケティング系とセールス系に大きく分かれているのが現状で、マーケの会社に広告やSEOを依頼してリードは取れたにもかかわらず商談化しないケースがたくさんあります。逆にインサイドセールスの支援会社はコンテンツを作るわけではなく、テレアポ代行に近いサービスなので期待値が高い商談が少ないと思います。あるべき論としては、マーケの企画で見込みが高いお客さんを連れてきて、商談化まで持ち込めるシームレスな体制が望ましいですが、複数のベンダーの活用はコストがかかるうえに接続性が悪いことが多いので、BtoBという横軸で切った時にマーケもセールスもできるし、マーケでもSEO広告やホワイトペーパー、ウェビナーなど色々な手段で商談化すれば同じ文脈で提供できます。ですので、会社としてはバリューチェーンを広げることを一番大事にしています。
上野:ライバルの会社も恐らく多い中で、他社比較での独自性はどのような点ですか?
太田:まずは、アフターコロナのBtoBの市場はデジタルの戦いですが、デジタルでマーケとセールスを両方提供する会社は知る限りではほとんどありません。マーケでもウェビナーとSEOを提供してる会社は恐らくありません。ザ・モデルを愚直に実践している会社は多くありませんので、先行優位性はあると思います。
アクセルを踏むタイミングとは
池田:では、今かなりいい位置で追いかけられる存在にもなりつつあるのが現状だと思いますが、少し話題を変えて先行優位性を守り切って、事業をさらに伸ばすための一番のキーが資金調達だと思いますし、この番組は資金調達をメイントピックとして扱っているのでお聞きしたいと思います。事業を守るとかグロースさせるという意味で、資金調達をどのように考えていらっしゃいますか?
太田:ありがとうございます。マーケの戦略とどのように紐付けるかが肝だと思っています。先行メリットを守るということでは、PMF(プロダクトマーケットフィット)した瞬間に一気にドライブして市場を取りに行くのは選択肢としてあると思います。元々がBPOの会社なのでキャッシュが回りやすいですし、私はファイナンス系が非常に弱いのでどのようなベンチャーキャピタルを選べばいいのか、エンジェル投資家が入るべきなのかまったくわかりません。
池田:資金調達ゼロの太田さんと、IPOと資金調達といえば上野さんという対極にいるお二人の話に非常に興味があります。
上野:よく言うのが、この瞬間に100億を手に入れたら間違いなく負けないですよね?これがファイナンスです。だから、まず資金を使って一気に面を取りに行くのは戦略だと思いますし、全ての面を取ってしまえば資金や売上は後からついてくると思います。だから、両方を一気に進めるのが恐らく戦略だろうと思います。段階を踏んだほうがいい会社もあると思いますが、特にBPaaSのような新しい分野やカテゴリー、考え方に関しては認知を取る意味でも資金調達して一気に攻め込むのは面白いと思います。
太田:私にも迷いがありますが、BPaaSはまだ新し過ぎるので、来年はBPaaSというキーワードが消える可能性があると思いますし、市場が広がらないこともあり得ます。
上野:そうだよね、そこがバランスなんです。分かった瞬間のアクセルの踏み方が重要ですが、BPaaSは大きな資金が必要なビジネスですか?
太田:BPO的なので労働集約です。ですので、IPOとBPaaSという見せ方でバリュエーションがつく可能性はなきにしもあらずと思っていますが、BPOと言われたら下がる可能性もあると思います。
池田:アクセルを踏むべきタイミングの見極めはアートだと思いますが、資金調達のプロの目線でアートを科学に変える、つまり言語化するとどうなるのかは非常に気になります。
上野:すごい難しいことを聞きますね。
池田:ずっと聞いてみたいと思っていましたが、なかなか機会がなくて。
上野:でも、踏む瞬間は分かりますよね?こればっかりは科学にはならなくて、経営者のアートじゃないですか?だって、絶対行ける、100億、200億、1,000億のマーケットになるなんていう瞬間は自分でしかわからないですよね。きっと100億や1,000億が見えた瞬間ですよね。自分が手掛けている仕事のマーケットのサイズが見える瞬間は、他の人には見えていない気がします。
上野:太田さんはまだ見切れていないですか?
太田:そうですね、まだぼんやりしている感じですね。
上野:でも反対に創業時のマーケティングなどの支援をしている時は、市場は分かるわけですよね?その市場が自分のものになると思ったらその事業をやりますよね?マーケットとして見えている部分があるからアクセルを踏むんですが、恐らくまだ見えない部分があるということだと思います。池田さんも昔事業をされていましたが、マーケットは見えなかったでしょう?
池田:見えなかったです。見えるかなというところで売ったので、結局見えずに終わりました。
上野:そうだよね。見えてたら多分売らなかっただろうし。
池田:見えなかったですね。学生の時でしたが、バリュエーションすら見えてなかったです。インターンもせずに、右も左もわからずに起業したのでわからなかったですね。
資金調達の新たなビジネスモデル
上野:調達という意味では出口戦略を考えなければいけないので、マーケットがどの程度大きくなるかという確からしさやどこまでコミットできるという真剣さは、他の人を巻き込む瞬間ですから絶対に伝わります。やはりその腹落ち感はアートだと思います。今後マーケットが見えるっていう時には、太田さんの会社は資金調達を考えますか?
太田:あり得ると思っています。BPaaSで今一番有名なのがChatworkですが、プラットフォームの多くのユーザーに経理の仕事などを丸投げして、マネーフォワードやフリーを使う人たちが捌くようなバックオフィスのBPaaSですが、私たちはマーケティングやセールスの攻める側のBPaaSのポジションを取りたいという構想はあります。普遍的な理論を作るようなものですが、このような施策をこの順番で打てば成長するというようなザ・モデル型のフレームワークとその実行能力も備えているので、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)のような機能を自社で持つのは現実的な選択肢だと思います。月数百万のコンサルの実務よりも、一部のエクイティを買い取ることで急成長させながら次のラウンドの投資家に渡すほうが利ざやが大きくなりますし、業績を伸ばしたい企業家と二人三脚に近くなるので、BPaaSとCVCは相性がいいと思います。
上野:それは面白いですね。一緒にやりましょう。
太田:ファイナンスのプロではないのでわかりませんが、ベンチャーキャピタルなどの投資家はファイナンスのプロに事業をプラスした感じだと思いますので、事業にファイナンスの要素をプラスするのは私は面白そうだと思います。
上野:それは確かに面白いですね。バイヤーアウトファンドのような一部の資金を入れるファンドや再生ファンドなどのように、お金も出します、事業に入り込みますというところに近いですね。
太田:確かにそうですね。
上野:資金を出す人たちと事業での売上作りをセットにして、お互いが得意な分野を手掛けるという動きは確かにアリですね。投資だけでなく事業にも入るというセットをプロとして手掛けるのは面白いかもしれないですね。
太田:私たちもリスクを取ってBtoB領域で結果を出すほど、投資を受けたい企業家のネットワークが広がると思います。
上野:ようやくビジネスの根幹が見えてきました。これを進めましょうよ。
太田:やりますか。
上野:色々な人を巻き込みながら進めるのがいいかもしれないですね。そうなると資金調達というよりは、資金を持ってる人たちとの協業かもしれないですね。
太田:ファンドを作る感じに近いかもしれないですね。
上野:自分で資金を出すと数が広がらないので、資金を持っているプロと組めば多くに投資できますね。そちらのほうが世の中のためにもなりますよ。自分たちで始めると他のファンドとの差別化がなくなってしまいますので、BtoBの営業はうまく行きそうな気がします。もう一つお聞きしたいのが、ラジオ収録前の製造業の話をもっとお願いできますか。
池田:聞きたいですね。
太田:ありがとうございます。私たちのお客さんは幅が広くて、ザ・モデル型のトップランナーからマーケ部署がない会社まであり、その中でも製造業はレガシーな業界ですが蓋を開けると面白いんですね。製造業は大きく2つに分けることができ、1台数千億の製品を卸すパターンと製造ラインの工場にカメラやネジなどの小さなパーツを足すパターンがあります。1台数千億であれば売る場所が決まっているためルート営業ですが、部品を売る会社は営業先のリストの幅が広いんです。リストの幅が広いと結果的にザ・モデル型に集約されますが、未だに非効率な仕事の進め方が残っているのでマーケ活動がうまくいかないと、銀を掘り過ぎて品質が落ちてインフレになる日本史の話と同じように、粗悪品が流通すると結果として消費者がどんどん貧しくなる状態になると思います。安くではなく正しい値段で売ると三方良しの関係を築くことができると思いますので、私たちが日常生活ではあまり触れることのない製造業の商品が意外と日本を支えている可能性が高いと思います。そのような商品が見えないところで粗悪品にリプレースされるのをなくしたいという思いを社名に込めています。シャコウという名前は、最初のお客さんがそのような商品を作る製造業だったのですが、話を聞くと案外すごい技術を持っていました。
上野:今のメインのお客様は製造業が多いのですか?
太田:いえ、多くはありません。今はウェビナーを頻繁に他社と共催していて、月に4、5回で千人くらい来ていただけるので、様々な業種業界からの課題を吸い上げて提案するのが基本的なマーケティングです。
上野:IT業界では製造業の方と接する機会がなくて、意外と実態が分からないので非常に興味深いですね。
太田:私が石材店を相手にしていたことも関係があるかもしれません。
池田:確かに繋がっていますね。
上野:両軸で進めて初めて日本のマーケットが見える部分があると思いますので、今後の進捗をお聞きしたいですね。
池田:例えば1年後にBPaaSがどうなっているかも次回お聞きしたいですね。
上野:継続してお話をお聞きしたいシャコウさんでした。
池田:次回は2人でプレスリリース書いてファンドを始めているかもしれないですね。
上野:そうですね、面白そうですね。いつかはただ資金を出すだけではなく、一緒に課題解決をするファンドをやりたいと思っていましたので、今日は興味深かったです。
池田:こちらこそありがとうございます。いい時間、熱い議論になりましたね。ではそろそろお時間なので、最後に宣伝したいことや採用の案内で、お客様へのPRでもいいですのでお願いできますか?
太田:ありがとうございます。改めてにはなりますが、シャコウという会社は基本的にザ・モデルの外注という形が一番分かりやすいと思います。もちろんマーケやインサイドセールスの一部でもご支援することは可能ですので、BtoBで売上をアップしたいとお考えのお客様であれば、弊社のスコープに絶対入ってきます。是非お気軽に相談ベースからでも、壁打ちベースからでも機会をいただければと思っております。
上野:それではザ・モデルが一番重要なポイントですので、最後により詳しく説明をお願いできますか?
太田:ザ・モデルはSalesforceが持ち込んだ仕組みで、有名な本もありますが、特に日本は古き良き営業、つまりリストの上から下までひたすら電話をかけ、アポを取り、訪問して営業して初めて買っていただくことまで全ての営業工程を1人の営業マンが月に何件こなせるかという戦いでしたが、やはり限界があります。もう1つは57%ルールというのがあり、インターネットが発達した現代社会でBtoBの企業は自分たちの課題を調べるのは当たり前で、買うか買わないかに関する57%くらいの意思決定は営業マンと会う段階で既に終わっているというデータがあります。ということは、企業の担当者が課題解決や情報収集をしてる能動的な勉強時間といかに接点を持てるかが重要であり、マーケティングが必要とされる理由だと思いますので、マーケ部署、インサイドセールス部署、フィールドセールス部署という形で3部門体制に分けることで顧客との接点の持ち方を効率化することがザ・モデルの定義です。ただ、ザ・モデルを取り入れてもうまくいかないケースがIT企業ですら多いので、ザ・モデル全部を外注しませんかというのが弊社の事業です。
池田:ご丁寧にありがとうございます。まさにこのBtoBのソリューションでお困りの方はシャコウまで是非ご相談いただければと思います。では、本日のゲストは株式会社シャコウ代表取締役太田翔葵さんでした。ありがとうございました。
太田:ありがとうございました。
本内容の音源は以下からご視聴ください。
IPOは通過点 #9 株式会社シャコウ 代表取締役 太田 翔葵様 – YouTube
■出演企業 概要
会社名:株式会社シャコウ
本社:東京都渋谷区渋谷3丁目9-10 KDC渋谷ビル8階
代表者:代表取締役 太田翔葵
企業URL:https://shakou-inc.co.jp/