2023/12/26
IPOは通過点

IPOは通過点 #2

冒頭挨拶


池田:株式会社Payment Technologyがお送りする スタートアップを応援するラジオ番組「IPOは通過点」。
パーソナリティの池田吉来です。

上野:株式会社Payment Technology代表取締役の上野亨です。

澤野:将来起業したいと思っている株式会社Payment Technologyの若手社員澤野です。

天野:株式会社Payment Technologyのマーケティング担当天野です。

上野:第2回目のテーマは、昨今問題主幹事がなかなか決まらない企業が増えており問題視されはじめている
「主幹事難民」についてお話したいと思います。

監査難民について


上野:「主幹事難民」を理解してもらうためには、まずは2016年ごろから2020年ごろまで続いていた「監査法人難民」から紐解いていくのが分かりやすいと思いますので、その辺りからお話しします。

上場するにあたって、企業は「監査法人」、「証券会社」、「証券印刷」、「証券代行」という4種類の業者と契約を結ぶ必要があります。

池田:「証券印刷」というのは何をする会社ですか?

上野:今では株はネット上で取引されることがほとんどですが、元々は”株券”という名前の通り紙媒体でしたので、
それを印刷するための会社です。株券の他にも、株を売るために必要な”目論見書”を印刷してくれる会社です。

最後の「証券代行」というのは、株を預かり、売買で発生する名義の書き換えなど裏側の処理を請け負う会社で、
主に信託銀行が行います。大きいところは三井住友信託銀行と三菱UFJ信託銀行で、この2行が8割ほどのシェアを持っており、残りの2割のシェアをみずほ信託銀行が持っているという構図です。

以上の4つの業者と契約をして、約3年ほどの期間をかけて上場までの準備を進めていきます。
中でも上場準備の初期に契約する必要があるのが「監査法人」で、それからおよそ半年から1年後に「主幹事証券会社」と契約するという時系列です。
この時間軸も、今回のテーマである「主幹事難民」を理解するうえで重要なポイントです。

澤野:ちなみに監査法人とは何をする会社なのでしょうか?

上野:会社が発表する決算情報に誤りがないかを第三者的にチェックする会社のことで、
元々は4大監査法人と言われる大手4社と、中堅どころの3社が占有していました。
決算情報は投資家が株を買うかどうかの判断材料になるので、監査法人のお墨付きである監査証明があるかどうかは非常に重要です。

ところが2016年から2020年ごろにかけて、この監査法人と契約できない企業が大量に発生したんです。
発端は、監査法人が監査証明を発行して上場した企業の中に粉飾決算を行っていた会社などが現れたことでした。

監査法人からすると重大な信用問題に関わりますし、未上場の中小規模企業との契約は大手企業よりも金銭的リターンが少ないこともあり、上場を目指す若い企業との契約をしぶるようになってしまったのです。
結果的に、4大監査法人のうち受け皿となってくれるのが実質1社のみになってしまい、上場したいのに監査法人と契約できない企業が大量発生しました。これが「監査法人難民」です。

主幹事難民について


上野:そのような状況を改善しようと、金融庁は2019年から2020年にかけて数回にわたり話し合いの場を設けました。
そこには大手や中小規模の監査法人、大手証券会社に加えて企業が数社呼ばれており、私も参加した一人でした。

話し合いの結果、それまで上場のためには4大監査法人と契約するしかないという”風潮”があったところを、
改めて、契約した監査法人の規模は上場時の審査に影響しないと明言されました。
合わせて4大監査法人が持っているノウハウや知識を、それ以外の監査法人にも共有していくことも取り決められました。
それを受けて多くの会計士が監査法人から独立し、監査法人難民だった企業たちの受け皿となりはじめたことで、監査法人難民は解消されることとなりました。

ところが、それまでボトルネックとなっていた「監査法人難民」問題が解消され、スタックしていた企業がどっと流れ込んできたことによって、それらを受け止める証券会社のキャパがオーバーしてしまったことにによって、今回のテーマである「主幹事難民」が引き起こされているというのが現状です。

澤野:ちなみに主幹事というのは、上場においてどのような役割を担っているのでしょう?

上野:主幹事というのは、一般的にはIPOコンサル契約を結ぶ証券会社のことをいいますが、
正確にはIPOで株を公募する際に株式を売り出す証券会社数社で形成されるシンジケート団の中で、主たる取りまとめを担う証券会社のことを指します。
その証券会社が主幹事となるのは上場後に株式を売り出す瞬間のみなのですが、便宜的に上場までの準備期間を含めてIPOコンサル契約を結ぶ証券会社のことを主幹事と呼んでいます。
今回のお話の中でもそのように認識してください。

天野:ずっと気になっていることなのですが、株を売る上で証券会社の存在って必須なのでしょうか?

上野:証券会社がIPOにおいてどういう役割を果たしているかでいうと、今お話したIPOコンサルティングというのが1つ。
加えて、上場するにあたって公募と売り出しの株式を証券会社が全て買い取ったうえで売り出していく、買取引受というものを行なっています。また書類上においては、上場申請時に必要な書類として主幹事証券会社の推薦状というのも必要です。

天野:監査法人同様、第三者的なお墨付きとして主幹事証券会社の推薦状が必要になるのですね。

上野:そうです。証券会社からすると、その会社の株式を売るにあたって一度全て自分たちで買い取ったうえで、
自分たちの資産として売り出していくため、自分たちの信用のためにも審査は厳しく行いたい。
ところが今、大小様々な監査法人の監査証明を受けている企業が大量に発生しているため、なかなか受け切れていないという現状につながるわけです。

この辺りについても全て数字で説明ができるのですが、それはまた次回お話しできればと思います。

 

池田:はい、では今回はこの辺りで、また次回。

 

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