
新卒採用は、一発勝負だった
新卒採用は、長いあいだ一発勝負だったと思う。
決まった時期に説明会が始まって、エントリーシートを出して、面接を何回か受けて、内定が出る。学生が会社を知るのも、会社が学生を知るのも、その数か月の中だけ。お互いに、ほとんど何も知らないまま「この会社で何十年」と決めていた。
8割以上が、就活の前に会社と出会っている
その形が、ここ数年で大きく変わってきた。
マイナビの調査では、2026年卒の学生のうち85.3%が、就職活動が本格的に始まる前にインターンシップや仕事体験に参加している。平均の参加社数は5.2社で、どちらも過去最高。会社の側も変わっていて、ダイヤモンド・ヒューマンリソースの調査では、インターンの参加者を実際に採用した企業は、大手で92.2%、中堅・中小でも71.3%にのぼる。
国のルールも、これを後押しした。以前は、インターンで得た学生の情報を採用に使ってはいけない、というのが建前だった。それが見直され、2025年卒の学生からは、5日間以上で、半分以上を職場での実際の仕事にあてるインターンであれば、そこで見た学生の様子を採用に活かしてよいことになった。「一緒に働いてみた」ことを、出会いとして認めた形だ。
履歴書には、残らないものがある
ただ、ここで考えたいのは、採用につながった出会いのことではない。つながらなかった出会いのほうだ。
学生の側から見てみる。5社のインターンに行って、入社するのは1社。残りの4社のことは、履歴書のどこにも書かれない。面接で落ちた会社も、説明会に行って「いい会社だな」と思った会社も、同じだ。でも本人の中には、「あの会社、好きだったんだよな」という気持ちが、ちゃんと残っていたりする。
会社の側も同じだと思う。説明会を開いて、インターンを用意して、面接をする。社員が時間を割いて、学生と何日も一緒に過ごす。新卒をひとり採用するのにかかる費用は、少し前の調査でも平均で90万円を超えていた。それだけのお金と時間をかけて出会ったのに、採用しなかった学生とのつながりは、選考が終わった瞬間に、何も残らない。
お互いに、確かに出会っていた。でも、その出会いは、どこにも記録されないまま消えていく。
それは、お互いの財産だ
私たちは、この「記録に残らないつながり」こそ、お互いにとっての財産だと考えている。
会社にとっては、時間と費用をかけて出会った人たちとの関係そのものが資産だ。一度インターンに来てくれた人、面接で話した人、自社を好きでいてくれた人。その人たちとのつながりを残しておければ、何年か後に、まったくの他人ではなく「知っている人」に声をかけられる。
働く側にとっても同じだ。入らなかった会社、落ちた会社、好きだった会社とのつながりは、履歴書には書けなくても、その人がこれから働いていくうえでの財産になる。いつか転職を考えたとき、副業を探すとき、「あのとき出会った会社」が選択肢として残っている。
私たちの視点
だから私たちは、こうした出会いを、会社のタレントプールの中に貯めていき、お互いに使えるものにしたいと思っている。かけた時間と費用を、その場限りで消えるコストではなく、積み上がっていく財産に変える。それが、私たちの考えるタレントバンクのあり方だ。
そして、学生のうちにつながる方法は、インターンだけではないと思う。アルバイトとして働いた会社、お客さんとして通った店、イベントや説明会で話した会社、先輩を訪ねていった会社。どれも立派な出会いで、どれも本当は記録に残しておけるつながりだ。
まず、つながっておく
新卒採用は、これからも早くなっていくと思う。でも見方を変えれば、会社と学生が出会う機会が増えている、ということでもある。
その出会いを、合否だけで終わらせない。履歴書に残らないつながりも、お互いの財産として持っておく。採用は、たぶんそこから、ずっと長く続いていく。
出典:マイナビ「2026年卒 大学生広報活動開始前の活動調査」(2025年2月)=インターンシップ・仕事体験の参加率85.3%・平均参加社数5.2社/ダイヤモンド・ヒューマンリソース 2026年卒採用アンケート(ダイヤモンド・オンライン2025年10月9日)=インターン類参加者を採用した企業:大手92.2%・中堅中小71.3%/文部科学省・厚生労働省・経済産業省「三省合意」2022年6月改正=タイプ3(5日間以上・半分超を就業体験等)の学生情報を2025年卒以降の採用活動に活用可/就職みらい研究所「就職白書2020」=2019年度の新卒採用単価 平均93.6万円。