冒頭挨拶
池田吉来(以下、池田):株式会社Payment Technology(以下、Payment Technology)がお送りするスタートアップ応援ラジオ番組「IPOは通過点」パーソナリティの池田吉来です。
上野亨(以下、上野):Payment Technology代表の上野亨です。
澤野慶(以下、澤野):Payment Technology若手社員の澤野です。
天野裕介(以下、天野):Payment Technologyマーケティング担当の天野です。
一同:よろしくお願いします。
池田:上野さん、始まりましたね。第1回目ということで、簡単にこの番組の趣旨というか、どんな番組なのかお話しいただけますか。
上野:私はPayment Technologyという会社で給料の前払いやBtoBの決済をずっとやってきましたが、一貫してスタートアップ企業の応援をサービスの趣旨にしてきました。また、もともと証券会社出身で、IPOの専門家としてサラリーマン人生を送ってきました。スタートアップ支援の文脈の中で、やはりIPOという言葉がどこかのタイミングで出てくることが多くて、IPO支援の情報番組をずっと温めてきましたが、ようやく実現しました。
池田:これからIPOについてこの番組でガンガン発信していくということですね。それでは、次に今回参加いただいている澤野さんと天野さんの紹介をお願いします。
澤野:少し前にPayment Technologyに入社しました。IPOは上場という意味程度の理解しかないので、上野さんから色々教えていただこうと思っています。転職して2社目、社会人2年目です。
天野:私はマーケティングを担当しています。企業が世の中の皆さんに認められる過程というIPOの流れはある程度理解しているつもりです。ただ、詳しいことはこの機会に勉強したいと思っています。
この番組の今後の展開
上野:二人ともすごく硬いですね。リラックスして話しましょう。
今日は、Payment Technologyの社員を中心にIPOについて話をします。そして、今後はスタートアップを支援、応援する番組として、起業したばかりの企業や、資金調達で注目されている企業に出演いただいてお話を聞いてみたいですね。他にも、IPO直後やかなり大きくなり始めた企業などにも出演していただいて、成功体験や失敗体験を色々な角度からお聞きしたいと思います。
また、IPOを支援する人達、例えばベンチャーキャピタルや銀行の方々などの話も面白いと思います。銀行の話は聞く機会も少ないでしょうし、他には士業の方などの幅広い人達から体験談を聞きながら、私のIPOの専門的なお話も番組でご案内できたら面白いと思います。
池田:楽しみですね。一般的にIPOというワードは、ビジネスパーソンにとってはある程度馴染みがあると思いますが、経験に基づいたより深い話はメディアにもあまり出ないので、現場の声や経験談は全てのビジネスパーソンにとって役に立つ情報ではないかと思います。
はじめにIPOとは
池田:今日はIPOの基礎編です。まず澤野さんにお聞きしますが、IPOは一般的にどのような意味だと理解していますか?
澤野:入社にあたって少し勉強しました。上場と同じ意味で、例えばスタートアップが株式を公開するというイメージを持っていますが、実際のIPOとは何ぞやを上野さんに教えていただきたいです。
上野:IPOとは何ぞやですが、I、P、Oは、イニシャル パブリック オファリング(Initial Public Offering)の頭文字です。日本語では最初の資金公募、つまり株式を世の中の不特定多数の人達に最初に買ってもらうことです。Iを取ると、PO(パブリック オファリング)となります。最初がIPO、2回目以降はPOです。
一方で上場というのは、日本では東京証券取引所の他に、札幌、名古屋、福岡の地方都市も含めた4つのマーケットで株式が取引されることと理解していいと思います。株式を印刷して買ってもらうパブリック オファリングと、株式がマーケットで取引される上場は違います。
後は、意外と知らない人が多い豆知識ですが、公募の反対の私募では49人まで募集できると法律で決まっています。49人を超えると公募、パブリック オファリングになります。だから、上場とIPOの意味をきちんとこの番組で勉強して、飲み会の席でさらっと言えるとかっこいいですよ。
澤野:上場とIPOが違うのであれば、上場以外にもお金を集める方法があるということですか?
上野:色々な集め方がありますが、株式発行で集めることを増資と言って、例えば第三者割当増資は特定の人に対して発行した株式を買ってもらうことです。株式による調達でも、公募、私募、第三者割当増資という種類があります。
池田:最近上場が比較的増えていて、小型の上場もありますね。独資で上場する企業もある中で、パブリック オファリングしないケースはありますか?
上野:いい質問ですね。東京証券取引所にはグロース、スタンダード、プライムという3つのマーケットがあります。どのマーケットも上場時にはある一定以上の公募をしてくださいというルールがあります。だから、基本的には上場とIPOはセットです。
澤野:セットだから混同するんですね。
上野:上場するためにIPOするという理解でいいと思います。
池田:澤野さん、短時間で業界通な会話ができるようになりましたね。
天野:上場廃止後に再上場するケースがありますね。その場合もIPOと言いますか?
上野:そのケースは言わないでしょう。セカンドですから、イニシャルとは言わないと思います。
天野:イニシャルは言い換えればバージンですよね。そう考えるとスタートアップは間違いなくIPOですが、再上場はIPOではないという理解ですね。IPOという言葉にこだわる以上、我々はバージンにこだわるという理解でいいですか?
上野:そうですね、イニシャルが重要ですね。
IPOするためには
池田:それでは、IPOをするためですが、どんな企業でもできる訳ではないですよね。IPOの条件をお聞きできますか?
上野:IPOのテクニカルな話として、例えばどの程度の規模の企業がIPOできるかということから始めたいと思います。証券取引所のルールですが、東京証券取引所のグロース市場の上場ルール、正式には上場審査基準の話です。
天野:東京証券取引所の3つのマーケットの中でも、グロースということは1番若い、つまり成長する企業の集まりですね?
上野:そうです。上場のルールですが、プライムとスタンダードは利益や売上の基準がありますが、グロースは基本的には成長する企業です。2022年の市場再編以前はマザーズというマーケットでしたが、前会計期間と比べて利益の約30%アップが成長企業だと認められていました。
池田:30%アップですか。
上野:10%、5%の成長はグロースではなく、着実に安定して利益を出しているからスタンダード市場というイメージで理解してください。他にも色々なルールでマーケットが分かれていて、形式的に満たさなければならない要件がありますが、実は全部逆算して計算します。
池田:逆算と言いますと?
上野:流通株式、つまりマーケットに流通している株式の割合と時価総額の基準では、全株式の25%をマーケットで流通させなければならないというのがルールです。さらに最低25%の流通株式の時価総額が5億円以上が基準です。
池田:そうなると、最低でも流通株式が25%として、上場時の時価総額は20億円以上という計算になりますね。
上野:そうですね、色々なケースがあり、最初は50%を流通株式とすることも可能ですが、一般的に25%で5億、時価総額20億と考えていいと思います。
池田:なるほど、一般的にIPOを目指し始めた人達が、利益1億円で上場基準という話をしていて、PER20倍の20億円という計算ですね。流通株式25%が一般的と思っていましたが、噛み砕くと50%で5億円流通という考えもあるんですね。
IPOした方が良い会社、しない方が良い会社
池田:IPOの大まかなルールはわかりました。次は、IPOした方がいい企業とそうではない企業をお聞きします。どのような特徴がありますか?
上野:そもそも何のために上場するかを考えてみます。企業が上場する、IPOするということは、企業をより大きくするために資金調達をするということです。上場のメリットとして、知名度アップとか採用で有利になるという話を聞くことがありますが、副次的効果であって、あくまで資金調達を目的にIPOしないと、最終的にはうまくいかないと私は思います。例えば、自分が経営している会社で100億のお金が調達できたら、ライバル会社には多分負けないですよね?
澤野:100億調達できたら、何でも実現できますから勝てますね。
上野:負けない戦いが実現しやすくなると思います。これがまさに資金調達です。だから何のために上場するかですが、資金調達を中心に考えてほしいと思います。つまり、マーケットで1番になりたい企業は上場した方がいい。例えば、歯医者は日本で1番になる戦い方はしないと思いませんか?多くの地域の人達が来院してくれれば嬉しいはずですね。このケースは上場の必要はありません。後は、例えばコンビニ。日本で1番のマーケットを取りたいコンビニは資金調達するべきだと思います。
天野:業界でトップになりたい、ナンバーワンになりたいという経営者の思いを実現するために、多くの資金が必要になった場合の手段が上場やIPOということですね。
何のためにIPOするのか
天野:でも、キャッシュがあっても1番になれる訳ではないですよね。つまり、投資の目的があって、調達した資金を使うビジョンがないと意味がないですよね。
上野:その通りです。色々な会社でIPOの顧問をしていますが、社長には100億を手に入れた時に、何に使うかを決めてください、それを考え続けてください、と最初にお願いします。そうすると、意外に答えを持ってない人が多いんです。
池田:確かに、100億の活用方法は、具体的には考えていないですね。
天野:具体的に理想を実現するために100億必要だから、調達するという順番ですね。
上野:だから、使い道を考えていない企業はIPOしない方がいい。この100億でどのように成長させるかを戦略として持っている企業はした方がいいと思います。後は、社長のパーソナリティです。自分だけが儲かればいい、お金持ちになりたいから起業したという人達も当然います。そういう場合は上場はマストだと思いません。
まとめると、ライバル企業に勝って業界ナンバーワンになりたい企業、お金を活用できる企業、それにより成長する企業はIPOをした方がいい、というのが結論です。
池田:IPOについて勉強になりました。それでは、IPOする場合にはまず主幹事を選ぶことになると思いますので、次回は主幹事について色々お話を伺えればと思います。では、今日の「IPOは通過点」第1回目はここまでとなります。ありがとうございました。
一同:ありがとうございました。