インボイス制度は平成28年度税制改正で導入が決定しました。
2023年10月1日より導入開始したインボイス制度。
導入に向けて企業は対応を求められる一方、世間では制度の廃止を求める声が上がるなど様々な意見が飛び交っているのが現状です。
この記事ではそもそもインボイス制度とはどういったものなのか、なぜ廃止を求める人がいるのかなどを解説します。
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目次
■インボイス制度廃止の可能性
■インボイス制度廃止の検討と影響分析
日本の税務においてインボイス制度は、消費税の適正な徴収を実現するための重要な柱です。
しかし、事業者や税務専門家の間で意見が分かれており、見直しに向けた多角的な議論が行われています。
導入以来、インボイス制度は消費税の課税仕組みに大きく寄与してきましたが、事業者からは負担増や複雑さが指摘され、廃止される可能性も否定できません。
特に、中小企業にとっての発行手間やコストが重荷であり、これが見直しの主な動機となっています。
税制改正や経済政策の変動で、インボイス制度の廃止や大幅修正が検討された場合、その影響は事業者の経営戦略に直結します。
廃止により、税務管理の負担が軽減される一方、消費税の透明性が失われるリスクも考えられるため、制度の存廃には慎重な分析が必要です。
読者の皆様が税務戦略を立てる際に必要な情報を提供するため、インボイス制度の廃止を含めた見直しの可能性を最新の動向や専門家の見解とともに分析します。
インボイス制度の廃止可能性について
インボイス制度の廃止議論と事業者への影響です。
インボイス制度は納税管理を厳格化し税収の正確な把握を目指すメリットがある一方で、小規模事業者にとっては大きな負担になり得る点が問題視されています。
特に、制度導入前に採用されていた消費税の簡易課税制度への復帰を求める意見や、事務処理の煩雑さを理由に廃止を訴える声が事業者から高まっています。
政府や税制の議論の場では、これらの指摘を重視し、制度の見直しに関する検討が行われることがありますが、インボイス制度の完全な廃止に進む議論は現時点で活発ではありません。
ただ、企業側の積極的な意見表明や社会ニーズの変化が今後の制度改革を促す可能性はあります。
したがって、税務に関心を持つ事業者や専門家はインボイス制度への理解を深め、変化に迅速に対応できるよう情報収集に努める必要があります。
また、税務戦略では今後の制度改正の動向を考慮し、適切な準備と計画が必要です。
最終的には、インボイス制度の変化にかかわらず、事業者が不利益を被らず発展できるよう支援することが私たちの役割です。
■インボイス制度とは
インボイス制度(正式名称・「適格請求書保存方式」)とは、2023年10月1日より導入された新たな仕入税額控除の方式をさします。
仕入税額控除とは、例えば課税事業者であるA社が商品Bを売り上げた際に預かった売上税額から、
A社が商品Bを仕入れた際に支払った仕入税額を差し引いた金額(納付税額)を納付するというものです。
インボイス制度導入後に仕入税額控除を受けるためには、売り手側・買い手側双方に以下の対応が求められます。
〇売り手側
・適格請求書発行のため、適格請求書発行事業者の登録申請をおこなう
※対象は課税事業者のみ。免税事業者は対象外です。
・インボイス(適格請求書)の発行
適格請求書とは、以下の項目すべてが記載されたものが対象となります。
1 .適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
2 .取引年月日
3 .取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
4 .税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率*1
5 .税率ごとに区分した消費税額等*2
6. 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
※簡易インボイス(適格簡易請求書)については項目6は省略可能です。
項目4についても税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)は必須では無く、
税率ごとに区分して合計した適用税率*1あるいは税率ごとに区分した消費税額等*2のどちらかの記載があれば問題ありません。
・インボイス(適格請求書)の控えの作成・保存(保存期間:7年間)
〇買い手側
・受け取ったインボイス(適格請求書)の保存(保存期間:7年間)
売り手・買い手側の双方の対応が無い場合、仕入税額控除が受けられないため結果として納付税額が高額になってしまいます。
では、なぜこういった制度が導入されることになったのでしょうか?
主な理由は、事業者が国に納めるべき消費税額を正確な形で把握するためです。
軽減税率が導入されたことにより、8%と10%の混在する税率を取り扱う国・事業者にとって
消費税額の確認は複雑化し、負担となっています。
そこで、適格請求書において税率ごとの税額の明記を義務化し、内容により一層正確性を持たせることができます。
また税率ごとの税額を明記させることで、消費税にまつわる処理上での誤りの減少や
不正防止に繋げたいという考えもあり、今回の制度導入につながりました。
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■インボイス制度の廃止を求める声
導入の理由を考えると、事業者・国の双方にとって合理的でメリットがあるように思う方も多いでしょう。
しかし、実際には制度に反対し廃止を求める声も少なくはありません。では、なぜ反対する人があらわれるのでしょうか?
廃止を求める人たちの懸念、それは非課税事業者(免税事業者)の存在です。
非課税事業者とは、課税売上高が1,000万円に満たないために消費税の納税が免除されている事業者をさし、
該当する主な事業者は個人事業主や小規模事業者などです。
この非課税事業者は、適格請求書発行事業者の登録ができません。即ち、適格請求書を発行することができないのです。
従って非課税事業者と取引を行った際に支払った消費税については仕入税額控除を受けることができず、
課税事業者は多く税金を払うことになります。
こういった事情から、非課税事業者からの仕入を避けたいと考える課税事業者が出てくることは当然あり得るでしょう。
そのために非課税事業者は取引先を失ってしまう=仕事が減少してしまう可能性があります。
または、取引を続ける条件として価格の値下げを要求されることもあるかもしれません。
その場合、取引を継続できる代わりに収入が減ってしまいます。
解消方法として課税事業者になるという手もありますが、免税対象ではなくなるため、消費税を納めなくてはいけません。
ただし、今回の制度導入には6年間の経過措置期間が設けられます。
非課税事業者との取引であっても6年間のうち前半の3年間は8割、後半の3年は5割の仕入税額控除が認められるというものです。
また課税事業者となった場合でも、
2022年12月発表の税制大綱にて一部対象者のインボイス制度の優遇措置が設定されることがわかりました。
内容としては、納税額の減額や補助金の上乗せといったものです。
引用:財務省 インボイス制度 支援措置があるって本当!?
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/invoice/index.html#a02
これらを踏まえ、この経過措置期間を、免税事業者のままでいるか、
あるいは課税事業者となるかの検討のための期間とするのもいいかもしれません。
またインボイス制度の反対を表明する動きとして、2022年3月に立憲民主党によりインボイス制度廃止法案が提出されました。
しかし、現時点において廃止の決定は発表されていません。制度導入を見据え、対応していく必要があるといえるでしょう。
引用:立憲民主党,【提出法案】インボイス制度廃止法案を提出
https://cdp-japan.jp/news/20220330_3384
■インボイス制度廃止に伴うデメリット
インボイス制度の廃止と税務への影響に関する議論が活発化しています。この制度が持つ消費税の透明性を向上させる目的は明確ですが、
廃止された場合、事業者が直面する懸念点については専門家の間でも共通認識があります。
今回は免税事業者と課税事業者の具体的なデメリットを深掘りし、税務に関心がある事業者や専門家が知っておくべきポイントを解説します。
まず、免税事業者についてですが、インボイス制度の廃止は間接的な影響が考えられます。
免税事業者は消費税の還付が受けられないため、消費税負担が増える懸念があります。
その結果、ビジネスコストが増え、最終的な商品やサービスの価格への転嫁を余儀なくされる可能性が高まります。
次に、課税事業者のデメリットですが、インボイス制度廃止は消費税の記帳や申告を複雑にすることが予想されます。
この制度のもとでは、課税事業者は認定を受け入力税の適正控除が行えましたが、その仕組みがなくなれば、消費税の正確な計算への自己責任が重くのしかかります。
また、税務調査のリスク増も忘れてはいけません。インボイス制度では証跡が求められ透明性が保たれますが、
廃止後は税務調査で証拠の提出が困難になり、税務リスクが増大する可能性があります。
さらに、事業者間の取引の信頼性低下も懸念されます。課税事業者が正しい消費税を申告・納税している証明が難しくなるため、
他の事業者との取引で不信感を招き、ビジネスチャンスの喪失につながることも考えられます。
これらの点から、インボイス制度の廃止は税務面で大きな変動をもたらし、事業者には計画的な対策が必要です。
制度の今後の動向に注目し、リスクを常に評価することが求められます。
免税事業者のデメリット
インボイス制度の廃止が免税事業者に及ぼす影響です。
インボイス制度が廃止される可能性があります。その場合、免税事業者に不利益が生じる恐れがあります。
制度の廃止は事業者間の信用関係に影響を及ぼし、適格請求書が取引信用の証となっているため、
発行できなくなると免税事業者は課税事業者との間で信用が差別され、ビジネスチャンスを失う可能性があります。
特に、制度が廃止された場合、免税事業者が課税事業者から受け取る適格請求書に基づく入力税控除の機会を失うことになります。
この変更は取引先からの信頼減少を招き、結果としてビジネス展開に大きな支障が発生する恐れがあります。
さらに、税務処理のシステム再構築や申告方法の改善には時間と費用がかかり、事業者には大きな経済的負担が発生します。
これにより、インボイス制度の廃止可能性とその影響を理解し、事前に対策を講じることは税務に関心を持つ事業者や専門家にとって必要です。
この変更が実現した場合、免税事業者は信用力を維持し、事業運営を安定させるための新たな戦略を立てる必要があります。
課税事業者のデメリット
インボイス制度の廃止リスクと対策
税務に精通している事業者や専門家は、インボイス制度の廃止が課税事業者に大きなデメリットをもたらす可能性があると懸念しています。
これまでシステムの更新や会計処理の見直しを進めてきた事業者にとっては、
この制度の廃止は再度の変更作業を余儀なくし、余計な経済負担となります。
さらに、制度廃止は消費税の管理を複雑にし、税務調査時の不透明さを増大させ、予期しない税務リスクに直面する恐れがあります。
制度内で利益を得ていた事業者は、インボイス制度の廃止によりビジネスモデルが大きく揺らぎ、経営に甚大な影響を受けることが予想されます。
これらを考慮すると、インボイス制度の廃止の可能性とそれに伴うリスクへの対応策を速やかに検討し、
事業の持続性と税務コンプライアンスを守る努力が重要であるといえます。
■インボイス制度の今後の展望
インボイス制度と事業者の対応戦略
新たに始まったインボイス制度は税務分野で大きな変革をもたらしています。
この制度が今後どのように進化し、同時にどのような課題を事業者に投げかけるかは非常に重要です。
廃止の選択肢が出た際には、機敏な対応が求められますので、全てのシナリオを想定した税務対策を練ることが各事業者に必須です。
本稿では、インボイス制度の未来と、もし制度が撤廃された場合の企業の対処法に焦点を当てます。
制度の変更は直接的な税負担だけでなく、会計処理や業務プロセスにも影響を及ぼす可能性があるため、準備は早めに始めることが賢明です。
インボイス制度の将来への洞察と万一のための戦略的アプローチを提供し、読者である事業者や専門家の未来の税務環境への対応をサポートします。
廃止可能性と今後の対策について
インボイス制度の廃止に備える事業者の対応策
日本でも導入されたインボイス制度には、事業者から懸念の声が上がっており、今後の存続をめぐる議論が活発です。
新たな負担を強いられる事業者もおり、将来に不透明な面があります。
この制度が廃止された場合、現在のルールに従いつつ変更にも迅速に対応することが求められます。
予防策として、税務申告のプロセスで最新の情報を得続けることが重要です。
更新される税制に対応するためには、情報源を確保し、適切な申告と管理が必要です。
顧問税理士と綿密に連携し、専門家の助言に耳を傾けることで税務リスクを最小限に抑えることが必要です。
さらに、廃止の影響に備えて、現在の会計ソフトや手法に頼らず、将来の税制変更に柔軟に対応できるシステムの導入も検討すべきです。
自動計算機能や税率変更への迅速な対応が可能な会計ソフトウェアの選定が必要です。
進化する税制に対して効率的かつ効果的に対応するためには、テクノロジーを活用した先進の会計システムを検討することが事業の継続性を高めます。
インボイス制度の廃止が議論される中で、事業者は現行制度の適応者だけでなく、変化を見据えて行動する必要があります。
税務の責任を果たしつつも、変わる税制に機敏に対応することで、事業の競争力を保つことが重要です。
■まとめ
インボイス制度により、特に非課税事業者が受ける影響は大きなものであると予測されます。
利益の損失を防ぐためにも、非課税事業者であり続けることのメリット・デメリットを
いまいちど比較・検討し判断する必要がありそうです。
PaymentTechnologyでは、月額980円で請求書の発行と管理・保存ができ、
さらに2023年10月からはじまったインボイス制度・
2024年1月からはじまる電子帳簿保存法にも対応の「請求書クラウド」、
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執筆者 N.T