2024/05/09
IPOは通過点

IPOは通過点 特別回 株式会社セグレト・パートナーズ 代表取締役社長CEO 種田 慶郎様

ついに、3人目のパーソナリティが加入


池田吉来(以下、池田):株式会社Payment Technology(以下、Payment Technology)がお送りするスタートアップ応援ラジオ番組「IPOは通過点」パーソナリティの池田吉来です。 

上野亨(以下、上野):Payment Technology代表の上野亨です。 

池田:今日は特別回ということで、新しいパーソナリティに加わっていただくことになりましたのでご紹介させていただきます。よろしくお願いします。

種田慶郎(以下、種田):セグレト・パートナーズの代表の種田慶郎と申します。よろしくお願いします。

池田:ついに3人目が加わりました。種田さん、簡単に自己紹介をお願いします。

種田:僕はずっとフジテレビジョンに勤めていました。最初は番組のADから始めて結構たいへんだったのですが、新しもの好きなこともあり、番組ではさほど才能を発揮できませんでしたが(笑)、イベントやコンサートなどの新規事業担当として活動し、その後、インターネット担当としても、いろいろと手掛けたりしました。特にiモードが始まった2000年ぐらいに、芸能事務所やミュージシャンのネットワークを活用してファンクラブサイトを立ち上げた際は、一緒に仕事をしていた受託先が、当時できたばかりのマザーズに上場したこともありました。
自然、フジテレビの中では「あいつはネットの人だよね」、という立ち位置となり、自分で新規のスマホゲームなどを立ち上げまして、スタートアップの人たちの協力を得て仕事をするようになりました。その流れで、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を手掛けることになりました。ベンチャーキャピタルでは担当としてそれなりの成果を上げましたが、特に5年くらい前に流行っていたソーシャルゲームの領域で利益を上げまして、今度は「お前もゲーム会社をやれ」ということで(笑)、フジゲームズというゲーム会社の代表を務めました。ただ、既にレッドオーシャンでしたので、自身は最初の公約どおり3年で退任し、その後、当時、上場企業4〜5社くらいの実質的なオーナーのファミリーオフィスで、投資や新規事業のアドバイザーとしてお世話になりました。
そちらを卒業し、昨年の夏ぐらいから、とりあえず、スタートアップの手伝いや、アドバイザーを依頼いただいた会社で仕事している時に、上野さんからこのお話をいただきました。自分の勉強にもなると思い、ご一緒させていただくことにしました。

 

テレビ局勤務からCVCに転身したきっかけ


池田:凄まじいご経歴ですね。てっきり最初はゲームの新規事業をされて、その過程でVCをされていたのではなく、逆なんですね。

種田: VCとゲームは同時でした。当時はTwitterのようなSNSが出てきた時期で、クローンのようなSNSを作るとか、YouTubeやUstreamのような動画など、いろいろなことを手掛けていました。結局一番マネタイズしやすいのがソーシャルゲームで、一緒に制作するパートナーを探すのがフックとなり、出資することになったので、同時進行しました。
今は日本VC協会とかで、独立系VCの方たちも、それなりのポジショニングでエスタブリッシュメント感を出していますが、10数年前までは、若干胡散臭く思われており(笑)、本人たちの意識でも、まだまだマイナーな存在な感じでした。当時はまだ、テレビ局に勢いがあり、紹介された会社をパートナーとし、事業予算を付けて成長させたことがあったので、フジ・メディア・ホールディングスの担当役員経由で、自分から投資事業を手掛けたいと申し出ました。初めは何を言っている!という話でしたが、いつの間にかやらせていただいたという感じです。

上野:投資はCVCのようなスタンスだったのですか?

種田:そうです。

上野:フジテレビと競業できそうな企業を中心とした投資だったのですか?

種田:厳密に言うと、事業会社のフジテレビやニッポン放送、ポニーキャニオンなどを傘下にもつ上場持ち株会社フジ・メディア・ホールディングスの新子会社として、新たにCVCを作りました。リターンよりもR&Dや協業目的という建て付けにしながら、リードを取る投資家と一緒に組むスタンスでスタートアップに出資したことが多かったと思います。基本的にフォローで入っていましたね。

上野:種田さんがソーシングまで手掛けていましたよね。

種田:はい。ただ、多くがアーリーステージの会社でトラックレコードや業績がなかったので、割と面白いとか、人間力がありそう、とかのような観点で、ちょうどテレビ局でドラマを当てた先輩が言っていた「こいつの目は本物だ」というように俳優を見抜く感じの定性的なソーシングが多かったですかね(笑)
当時は他の独立系VCの方たちも、アーリーステージの人に対してはそのような感じだったので、結果的に同じような投資先に落ち着いていました。

池田:売れる俳優を見抜くのと同じなのですね(笑)

 

村が新宿区に。スタートアップ界隈の変化


上野:表現が独特ですね。投資をする時に、スタートアップの界隈が変わった点は感じられますか?

種田:スタートアップには2000年ごろから関わってきましたが、専業となった2010年当時でもインターネット業界は小さな村のようなもので、ほとんどが知り合いでした。だから、当時のIVSのようなイベントはいつも同じ顔ぶれで、たまに若い人が参加すると「すごいじゃん!」という雰囲気。そのような小さな村なので起業したい人たちもまだまだ少なければ、投資できる人たちも少なかった。その後はインターネット産業と他の産業との境界線が曖昧、全部がインターネットにつながったので、当然お金を出す人も格段に増えましたし、リスクマネーが多くなり起業したい人たちが増えたことで、村だったのが新宿区くらいの大きさになり(笑)、全体像を掴むのが難しくなりました。だから、投資家も含めて勉強量は増えたと思いますが、優秀な起業家の割合が増えたかというと、相変わらず一定数だけかなという気はします。

上野:反対に、学生で起業する人たちが高学歴化していると思いますか?

種田:確かにそれはあると思います。でも、僕らの学生時代も大企業への就職ではなく起業したい人は、別に勉強がよくできるエリートじゃない人が多かったですよね。今もそうですが、独立志向が強くて起業や社長を目指す人が多かったと思いますが、自己資金や借金なしで起業できる環境が整い、クラウドの普及や在庫や歩留まりリスクがなくなったりしたことで、いわゆる感度がいい起業家が増えたのは間違いないでしょうね。

上野:やはり金の出し手、ベンチャーキャピタルが増えましたよね。

種田:相当増えましたよね。どのような目的で増えたのかは分かりませんが、ベンチャーキャピタルのスタッフも独立してファンドを組成する側に回ることをゴールとする人が多く、大きなファンドで社長に登り詰めるというタイプではない起業家志向の人たちが多いと思います。あと、CVCがとても増えた気がします。

上野:増えましたね。CVCを支援するチームを作る営業をするベンチャーキャピタルもありますね。

種田:最終的なデシジョンもネットワーク構築もできるので、個人的には自分たちで全部やったほうがいいと思います。最初にフジでファンドを作った際も、委託運用がいいという意見がありましたが、それだと意味がないと思いましたので、フジ・スタートアップ・ベンチャーズという、独立したハンズオンしながら企業家たちと直接向き合うスタイルにしました。

 

スタートアップにとってCVCは中途半端?


上野:このメディアは調達を主なテーマにしています。ベンチャーキャピタルがLPとしてお金を集めることと、出資を受ける側がベンチャーキャピタルに対して考えていることの2点を深掘りしたいと思います。種田さんの会社は100%がフジだったのですか?

種田:99%です。

上野:CVCを持たずにLPとしてお金を預けるのとCVCは差があると思いますが、その点を分かりやすく皆さんに解説していただけますか。

種田:まず、個人的な意見ですが、昔からCVCはいらないと思っています(笑)理由は僕が作ったCVCは、独立系ベンチャーキャピタル数社にも、ファンドからファンドの形で資金を入れていましたが、ベンチャーキャピタルとコミュニケーションを取っていると、いろいろな情報を教えてくれますのでR&Dとしては十分でした。あと、ベンチャーキャピタルは、L Pの事業会社に対し、投資先のアーリーステージの株を引き受けさせるイグジットや、業務提携で会社のバリュエーションを上げようと考えます。普段からコミュニケーションを取っていると、出資すればよさそうな会社は分かるので、その場合は、CVCではなく事業会社本体がマジョリティを取る形がよいと思います。そういう意味ではCVCは中途半です。LP出資か、買収するか、51%少なくても20〜30%で関連会社にするくらいでないと、スタートアップも事業会社が入ったありがた味が味わえない気がします。会社の規模と出資額が釣り合わないとお互いに不幸になります。僕はCVCの目的は、外向きなアピールや内向きの新しいことをやってる感が非常に大きいと思っています。もちろん、ちゃんとしたCVCもいらっしゃいます。

上野:勉強になります。

池田:CVCで特徴的だと思ったのがKLabさんです。MBOして社長がANOBAKAさんとして独立した当初から、最初のファンドは100% KLabでしたが、2号目からは私募で子会社としてVC業を手掛けていた点はとても特徴的でした。他のCVCさんは、親から100%LP出資のパターンが多いと思います。

種田:グリーさんやMixiさんなどのインターネット企業は外から資金調達して、CVCとは別の本体とは独立したベンチャーキャピタルを、新しいビジネスとして始めたところも多いと思いますね。

池田:いまCVCは色々な形がありますね。サイバーエージェントの藤田ファンドはBSから本体で出資する形だし、種田さんがおっしゃるように正解がないながらも、情報収集だけかしっかり組むか濃淡がはっきりしていますね。

種田:CVCは営利目的ではない感じがします。僕も作る時に儲けなくていいと言われており、結果、かなり利益が出たので、むしろ困るとか言われました(笑)
利益ではなく、R&Dや事業の現場の人たちにありがとうと言われるのが目的となると、クレドやミッションがないスタートアップと同じでブレてしまい、モラルハザードも起きます。ゴールがないから、おかしなことになるとの意見もありますし、やりがいもなければ、何が正しいのかわからなくなりますね。

 

スタートアップが出資を受けるための本当の話


上野:一方で出資を受ける側はベンチャーキャピタルとCVCの使い分けや、どのように考えてお付き合いすると良いのかアドバイスいただけますか?

種田:起業家は背に腹は変えられないという状態に絶対になると思いますが、なるべくなら早め早めに動き出し、出資してもらいたいと思う人たちから順番に多く当たるのがいいと思います。
自分にはどのような投資家が理想かを考え、細かくアドバイスや世話を焼いてくれる人、金だけ出してくれる人、厳しい人など、いいと思う人を最初に入れ、次にはあの人が続いて欲しいという感じで順番を付けて計算しておいたほうがいいと思います。

上野:スタートアップの若者たちからすると、企業名は分かるけどキャピタリストの名前までは知らないですよね。

種田:知らないですね。

上野:これはどうすればいいと思いますか?

種田:馴れ馴れしい人いますよね。例えば、急にいろいろ教えてください、その代わり種田さんの公式TikTokを運営しますという人がいきなり来ますが(笑)、そのような人はホントすごいと思います。波長が会う人にいいタイミングで会うことがあるので、とにかく人脈を広げるのが一番だと思います。
僕は知り合いの独立系ベンチャーキャピタルの創業者たちと会う機会がありますが、味やスキルのある皆さん揃いです。ただ、シードの人たちは、彼らではなく、インターンと大きく違わない経験の浅い部下のキャピタリストと会ったりしています。そのような事業経験のない人には、事業で困っている人はあまりいい印象を持たないので、ファンド自体の印象をそこで判断されるのはもったいないと思います。

上野:スタートアップの方たちは、人脈というかいろいろとチャレンジしなさいということですね。

種田:僕の仲がよい若手起業家で、本当に図々しくてちょっとしたチャンスも逃さない。ウケるためなら何でもやるくらい根性が座っていて、多くの人に可愛がられ、後輩からするとロールモデルになっている人がいます。

池田:今度この番組にも来てもらいましょう(笑)。たぶん、彼とは私も知り合いで、最近も10億円くらい調達しました。最初はトリミングのBtoCでしたが、モデルチェンジするためにお医者さんの日本中行脚に貯金10万円弱で縦断したらしいです。そのような人間力、人を惹きつけ、仲間に入れ、飲み会でこの人と決めたら出資するまで帰さないところはすごいですね。

種田:10人にそのようなことをすると3人くらいは仲間になって、ハロー効果のように徐々に人気者になってくるのではないかと思います。

池田:3回会うと、なぜだか好きになるタイプです。

種田:調達だけではなくて事業開発に関しても勉強になる人だと思います。

上野:投資する側からは成功する可能性が高いと思われますから、そういう人を目指してほしいですね。

池田:では種田さんには今まで色々と面白いお話を聞かせていただいてきましたが、パーソナリティーに加わっていただけるということで、最後に意気込みを一言いただいて終わりにします。

種田:ペイフォワードと言いますか、後に続く世代に対して少しでも助言できるタイミングがあればいいなと思っていた時に、尊敬する上野さんからお声かけいただき、こういう素晴らしい機会をいただきましたので、是非、お二人と一緒に盛り上げていきたいと思います。よろしくお願いします。

上野:よろしくお願いします。

池田:お願いします。では今後の放送は加わっていただけるということで、皆さん楽しみにお待ちください。本日は以上です。ありがとうございました。

種田:ありがとうございました。

 

■出演企業 概要
会社名:株式会社セグレト・パートナーズ
代表者:代表取締役社長CEO 種田慶郎

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