冒頭挨拶
池田吉来(以下、池田):IPOは通過点。株式会社Payment Technology(以下、Payment Technology)がお送りするスタートアップ応援ラジオ番組パーソナリティの池田吉来です。
上野亨(以下、上野):Payment Technology代表の上野亨です。
池田:よろしくお願いします。そして、今日はゲストもいらっしゃっていますので、ご紹介いたします。株式会社フーモア(以下、フーモア)代表取締役の芝辻幹也さんです。
芝辻幹也(以下、芝辻):フーモア代表の芝辻です。よろしくお願いします。
株式会社フーモアと芝辻代表について
池田:まずは、自己紹介とフーモアさんのご紹介をお願いしてもよろしいですか?
芝辻:はい。まず私は、1983年生まれで去年40歳になりました。愛知県出身で東京工業大学入学の際に上京しました。東京工業大学は、今年から医科歯科と合併して東京科学大学に名前が変わりますが、その母校から去年、新しい技術・サービス・製品・ビジネスモデル等を事業化したベンチャーに贈られる蔵前ベンチャー賞を表彰されました。その賞を受賞すると、株式会社ツクルバさんやKIYOラーニング株式会社さんなどのように上場すると言われています。
26歳の大学院修了後に、1社目のコンサルティング企業のアクセンチュア株式会社に就職して、プライベートでルームシェアをはじめました。
はじめた理由は、住人が2人抜けるから入りませんかと言われたからですが、野村総研やミスミなどの自分たちで起業したい人達とシェアをして面白いプライベートでした。その人達が起業するタイミングでアクセンチュアを退職して、最初の会社を起業しました。
その会社ではグルーポン系のビジネスクーポンの共同購入で、みんなで買うとチケットが半額になるというサービスを手掛けました。盛り上がる前にサービスをはじめましたが、その時に自分で会社を経営することを意識しました。結局、その会社はうまくいかなかったので事業譲渡して、ベンチャーに転職後の2011年に今の会社をはじめました。
元々絵を描いていたので、プレイヤーよりは絵を描く方を支援したくて、特にビジネスモデルもなくとにかく会社を作ってみようと思って今に至るという感じです。絵をビジネスにすることだけは決めていましたが、それ以外はあまり決めずに作りました。
今はイラストや漫画を作るサービスを手掛けています。150名くらいの社員の中にイラストレーターや漫画家がいて、外部のクリエイターさんとのネットワークを活用して一緒に物作りをしています。創業時はスマホが出始めたタイミングだったので、漫画を一コマ一コマ切ってスマホで見やすくするビジネスを考えました。当時Webtoon(ウェブトゥーン)というデジタルの漫画が韓国で流行っていたので、日本の漫画を翻訳したほうが早いと考えましたが、全然うまく行きませんでした。うまく行かなかった理由は色々ありますが、そもそも見開きでデザインされている紙の漫画を、1コマ1コマに切ることに許諾があまり下りませんでした。
当時はグリーやモバゲーのいわゆるソーシャルゲームが流行った時期で、毎週のイベントのガチャで出るキャラクターのニーズが生まれてから、絵に対してお金が付くようになりました。絵が描けてビジネス感覚がある人が少なかったので、ディレクションを始めてから今の会社の制作スキームができたという流れです。そこから大きく市場が伸び始めたので、1年目は大体売上数千万、利益数百万の仕事を1人、2人で回していましたが、翌年に2、3億円まですごい勢いで成長しました。5億円まではその勢いが続いたことで、ベンチャーキャピタルから急に声が掛かるようになり、メインのゲームとその周辺ビジネスのベンチャー村に入って、収益化のロジックを学んでから2013年頃の創業2年目でベンチャーキャピタルから資金調達をしました。
上野:調達の1発目が2013年ぐらいですよね。
芝辻:そうです。ゲーム自体は2013年以前から盛り上がっていて、リーマンショックの後の2008年に最初に上場したグリーがすごい勢いで伸びていました。株式会社コロプラというゲーム会社が、ガラケーがメインの時代にスマホシフトへと初めて舵を切って、iOSより強かったAndroidで急激に伸びたこともあり、ガラケーを含むソーシャルゲームのマーケットが急激に立ち上がりました。マーケットの規模は現在1兆円を超えていますが、当時からその規模になるだろうと言われていました。
上野:芝辻さんに最初にお会いしたのもその頃だと思います。ベンチャーキャピタルから調達したという情報をキャッチして、証券会社時代に主幹事をやらせてくださいとお邪魔しに行ったはずですね。
芝辻:上野さんはとてもパワフルな印象でした。前のオフィスの時代です。
上野:その頃ですね。私はSBIにいましたが、他の証券会社の偉い方々に相当イケイケなことを言いながらガンガン戦っていました。
芝辻:お会いしたのは2014年8月4日で、相当暑かったのを今でも覚えています。とても懐かしいですね。
今後のマーケットの動きについて
上野:ところで、芝辻さんのマーケットは今後どのような動きになると思いますか?
芝辻:国内と海外で違う動きになると思いますが、国内市場はじわりじわりと伸びて、その後にピークアウトすると思います。
というのも、50代以降はスマホで支払いをする人は少なくて、特にゲームにはお金を使わない年齢層だと思います。一方で、スマホでクレジット決済が可能になる若者が毎年100万人弱、増えます。そのような若者は、60歳、65歳になってもお金を払う可能性があるので、そこまでは市場が伸びると思います。有料ユーザーが毎年数10万人は増えるので、向こう10年くらいはゆっくりと伸びる気がします。現状としては、国内マーケットは若干の伸び代があるので、中国の大きなプレイヤーなどの外資の参入により日本企業にとってはパイが徐々に小さくなっている面と、ゲームのクオリティが格段に上がってきたので開発費が高騰しているという流れがあります。
上野:ゲームを作る開発費ですか?
芝辻:そうですね。スマホ向けゲームの開発コストが50億円以上かかるケースもあるので、回収の体力のない会社はどんどん撤退しています。その他にもゲーム市場という意味では、ゲーム会社のカプコンの時価総額が大きく伸びていて、昔のソフトの売れ行きがとても良いことが理由です。ゲームの歴史を振り返ると、任天堂やソニーがハードとソフト両方を売っていますが、昔はセガのドリームキャストなど他のハードがありました。そのハード競争が終わって二大巨頭になって、今はないファミコンのようなハードのソフトをゲーム販売プラットフォームのSteamにパッケージして売り始めました。昔のゲームをもう1回遊びたいという大人たちが、20年後、30年後に幼い頃にプレイしたゲームで遊んでみようという層で市場が伸びています。
上野:カプコンにはどのようなゲームがありますか?
芝辻:ストリートファイター2やモンスターハンターが有名ですが、過去のタイトルがSteamで売れるんですね。スマホゲームは運営をメインにしているので、パッケージは難しいかもしれませんが、そのような売り方ができると効率の良いビジネスになります。ですので、グローバルのゲーム世界ではワンソースマルチユースと言って、1つのゲームが好きなデバイスで遊べる、つまりSwicthでも、Steam、スマホでも遊べるのが上位タイトルには多いです。例えば、フォートナイトのようにPCでもPlayStation、スマホとデバイスを選ばない遊び方になってきています。
他の話題としては、コインチェックの共同創業者和田さんがSteamでパルワールドというゲームを販売して、3日で200万ユーザーに達して世界一になりました。6年くらい制作期間をかけたとか、100万ユーザーでサーバーは1人で運営しているなど、大きなニュースになっています。Steamにはカジュアルなゲームが多い中で、ハイエンドなゲームを大ヒットさせたのは夢があると思います。売上の面でも、3日で60億だから夢がありますよね。パルワールドは今後運営する必要があると思いますが、難易度がとても高かったと思います。
上野:3日で60億はすごいですね。
芝辻:ゲーム業界でもこのような新しい動きがあります。
上野:ゲーム業界の話は終わらなくなりますね。
芝辻:グローバルのマーケットに話を戻すと、先ほどの通り若者がどんどん増えていくので、スマホのエンターテインメントやゲームは大きく伸びるといわれています。
資金調達について
池田:グローバルは大きく伸びるんですね。伸びるには資金も必要になると思いますが、創業2年目の初めての調達から、その後も同じような形でベンチャーキャピタルから調達を受けてきたんですか?
芝辻:はい。受けてきました。
上野:その時とはストーリーが変わっていますか?
芝辻:少し変わっています。当時は制作をメインにするストーリーでした。クラウドソーシングというプラットフォームで、仕事を依頼したい人と受けたい人をマッチングして手数料20%を頂くビジネスでした。そのクラウドソーシングにディレクションで付加価値を付けることを売りにしていました。ゲーム以外にも音楽や、3DCG、漫画も同じようにエンターテインメントコンテンツを制作するストーリーで、制作した分の売上は伸びるので、実績をベースした売上予測を引いて最後はIPを作る構想でしたが、今は音楽などの制作はしていません。
上野:この番組の趣旨の一つが調達ですのでお聞きしたいのですが、全部で3回くらい調達ラウンド設けてますよね?
芝辻:エンジェル投資家1回、今シリーズDなので5回です。5回の間に細かい調達があります。
資金調達ー事業会社とベンチャーキャピタルに求める役割や資金調達の用途について
上野:掘り下げてお聞きしたいのですが、事業会社とベンチャーキャピタルと大きく分けて2つから調達していると思いますが、それぞれに求める役割や今後どのようにお付き合いをしていくのかをお聞かせいただけますか。
芝辻:エンジェル投資家も事業会社だったので、ベンチャーキャピタルと半々の割合です。事業会社の役割は事業連携なので、事業を推進することで売上や利益をお互いに作ったり、商品を制作することが主な目的になります。
上野:基本的に資本業務提携と考えればいいですか?
芝辻:そうですね。提携するときは、資本は提携しなくてもいいという事業会社もいますが、資金とセットだったらコミットすると自分自身で伝えます。その結果、資本業務提携することが多いです。
上野:業務提携と資本をセットにしたんですね。
芝辻:そうです。事業会社にとっては業務提携が重要ですが、ベンチャーキャピタルにはデューデリジェンス含めて値付けをリードしてもらいます。事業会社は、基本的に株式関係を含めて決まった価格に応じます。
上野:それぞれのラウンドでは、ベンチャーキャピタルと事業会社がセットになっているケースが多いんですね。
芝辻:逆に言うと、事業会社が事業連携と出資をするので、ベンチャーキャピタルも出資しやすいと思います。どちらが先かはさておき、ベンチャーキャピタルと事業会社が参加するケースもあれば、事業会社だけのケースもあります。
上野:出資された事業会社の名前を見ると、かなり親和性の高い会社が多いと思います。手に入れた資金は、主にどのように投資しましたか?
芝辻:基本的には毎回使い道は決まっています。例えば最初の2013年は制作ビジネスのインフラへの投資と採用に使いました。知名度がないので採用は大きな課題で、自分のFacebookの友達全員にアタックしたこともあったくらいです。他にも、新規事業が既存事業の飛び地のケースで、連携パートナーの目星が付いたのでお金を集めた時もありました。あとは、シードやアーリーレベルでも既存事業が成長していてイグジットが視野に入っているので、資金提供を受けたパターンもありました。
上野:ベンチャーキャピタルと事業会社とではどちらが資金調達が厳しいですか?
芝辻:どちらが難しいということはないと思います。事業会社にとっては受発注すれば良いので、資本を入れる大きなメリットはありません。キャピタルゲインが目的ではないので、資本を入れる理由がないんです。
上野:でも、事業会社も結構資本を入れていますよね?
芝辻:そうですね。あとは、事業会社と提携して事業を進めるので、不足する資金をベンチャーキャピタルから資金調達することもあります。
上野:面白いですね。
芝辻:過去に調達した時は微妙なストーリーでも、例えば最近縦スクロールの漫画がうまく行きはじめてるように、結果的に事業を続けてますので、実際に提携したい会社も多いです。提携するためには、出資でなくてもいいんですが、色々な手を打ちたいというのと、提携することで箔がつくことも重要です。どちらかというと発行体側のニーズが大きいかもしれません。
上野:箔も重要ですね。発行体が重要というのはよく分かります。
芝辻:そうですね。業務連携だけではなく、資本を提携するのはそういうことだと思います。
上野:普段投資をしない事業会社も御社に結構参加しているのは、すごいと思います。
芝辻:普通であれば、20%以上の出資での連結決算を考えると思います。自分が上場企業のCFOだったら少なくとも20%と考えますから、マイノリティ出資は純粋投資になりますよね。
池田:上場企業からすると決算への影響がない訳ですね。
上野:キャピタルゲイン目的になるケースを、事業提携だけではなく資本提携まで話を持っていくところがすごく面白いし、独特だと思います。
池田:そのように独特な事例を作る中で、事業会社にとっても前例がない取り組みだったと思いますが、ハードな交渉とかご苦労されたことはありましたか?
芝辻:そうですね。資金調達で1番ハードなのは、リード投資家を決めることだと思います。リード投資家を決めると、株価を決めることになりますので、どのような仕上がりで今回のラウンドを進めるかがほぼ決まります。あとは、フォロー投資家です。フーモアの場合は事業会社との提携が多いですが、ベンチャーキャピタルにするか事業会社にするかもポイントになると思います。事業会社からの調達が多い理由としては、フーモアの業績が読みやすく、事業会社が投資判断しやすいことがあると思います。足元の事業がじわりじわり伸びていて、クライアントワークビジネスなのでワーストケースが見やすいうえに、提携している会社も分かりますから。あとは、長年この業界で事業を続けているのも信頼に繋がっていると思いますね。
芝辻代表の経営におけるHard Thingsとは?
上野:資金調達の話から少し外れますが、芝辻さんの経営におけるHard Thingsをお聞きしてもいいですか?
芝辻:2018年にミドルクラスの社員が全員辞めたことです。当時全社員で60人、70人の中で1人、2人以外のミドルクラスが20人くらい抜けました。あの時は結構きつかったかもしれないですね。
上野:私だったら泣いちゃうかもしれない。その時はどのようにして乗り越えたんですか?
芝辻:ナンバー2の斉藤という役員がほぼ立て直しました。進めたい一事業でパートナーと組んで出資も受けることになって、ちょうど上場を目指すぞというタイミングでもあったので、予実合わせのためにポンポンポンッと社外から新しい人を上層部に採用したことが原因で、組織が壊れたんじゃないかと思います。現場で頑張っている人たちも、恐らく上が勝手に自爆したように感じて、テンション下がりますよね。その頃が一番きつかったですね。
上野:その後は、現場の方々を引き上げて立て直したんですか?
芝辻:そうですね。全部白紙にして元の体制に戻すことと、自分たちがやってる仕事に誇りを持つことをメッセージとして伝えました。
上野:会社の目指す方向性とか理念から入ったんですか?
芝辻:理念というよりは、元々の事業を少し軽視したのが真の問題だと思います。私が新しいことに重きを置き過ぎたので、原点に向き合って仕事に誇りを持つことと、まずしっかりと体制を作ることに力を入れました。もちろん、ビジョンや理念もあると思いますが、仕事が好きで集まっている人が多いので、何を価値とするのかをもう一度見直して、まずはトップがその姿勢を示しました。
上野:組織は壊れやすいと思いますが、その危機をきちんと乗り越えたこと、20人の離職で止めて立て直したのはさすがですね。
芝辻:ナンバー2の斉藤がいなかったら終わっていたと思います。
上野:斉藤さんのその時の踏ん張りや取りまとめのお陰ですか?
芝辻:そうですね。斉藤は淡々としていたかもしれませんが、もう一度向き合っていこうという勇気をもらえました。
現在の株式会社フーモアの組織体制と今後の展望について
上野:5、6年前の話を伺いましたが、ちなみに今は社員は何人になりましたか?
芝辻:150人ぐらいです。
池田:急成長中ですね。
芝辻:そうですね。トップラインが毎年30%以上、去年は約40%伸びました。
池田:素晴らしいですね。
芝辻:そのように成長する絵を描きましたし、実際3年連続で伸びています。でも、問題は多いです。
上野:ベンチャーの経営は問題が多いですよね。
芝辻:そうですね。
池田:問題はありつつも3年連続で急成長という中で、今後の展望はどのように考えられていますか?
芝辻:制作ビジネスは盤石に伸ばしていこうと思っています。また、リスクを取ってはじめた縦スクロールのWebtoonのビジネスの結果が出ているので、それを起点にもう少し大きな一手を打ちたいと思っています。
池田:次なる大きな一手ということで、楽しみですね。まさに急成長中で、これからも色々な社員を巻き込んでいきたいというところで、是非最後に会社のご紹介をお願いします。
芝辻:引き続きエンタメ業界で頑張りたいと思います。ほとんどの事業で色々な職種を募集中で、新しく企画営業の採用もありますので、是非ご応募いただければと思います。
https://www.wantedly.com/companies/whomor
池田:気になる方は是非フーモアと検索して採用ページをご確認ください。今日のゲストはフーモア代表芝辻さんでした。ありがとうございました。
芝辻:ありがとうございました。
本内容の音源は、以下からご視聴ください。
IPOは通過点 #5 株式会社フーモア 代表 芝辻 幹也様 – YouTube
■出演企業 概要
会社名:株式会社 フーモア
本社:東京都中央区銀座8-15-2 銀座COMビル3F
代表者:代表取締役 芝辻 幹也
企業URL:https://whomor.com/